トランプ氏とマスク氏、蜜月一転の激しい対立 ~NASA人事が決定打か、新党設立示唆も~

蜜月関係から一転、ドナルド・トランプ前大統領とイーロン・マスク氏の間で激しい批判合戦が続いています。かつては互いを称賛し合っていた両者ですが、今や溝は深まるばかりです。何が原因でこの関係が悪化したのでしょうか。このニュースでは、両者の対立の経緯とその背景にある要因を詳しく掘り下げます。

悪化する関係:報復示唆と激しい言葉の応酬

大統領専用機内での記者からの質問に対し、トランプ氏はマスク氏との契約解除による予算削減案について、「すべてを検討するつもりだ。巨額の資金であり、巨額の補助金を受け取っている。それらを再検討していく。フェアでなければならない」と述べ、マスク氏の企業に対する報復を示唆しました。

側近たちによる関係修復の動きもあったようですが、トランプ氏は「あまり興味がない。私はこの国の問題解決に関心がある」と一蹴。公開の場で繰り広げられた大喧嘩は、激しい言葉の応酬に発展しました。

ワシントンでの発言で、トランプ氏は「イーロンには非常にがっかりした。色々と助けてやったのに。政権への恋しさのあまり攻撃的になる人がいる」と批判。対するイーロン・マスク氏は自身のXで、「私がいなければ、トランプは選挙に負けていただろう。なんて恩知らずだ」と反論しました。

蜜月関係とその背景:政権入りから外遊まで

かつて両者の間には「蜜月」と称される関係がありました。マスク氏は、自身が提案した行政の無駄を省く新組織「DOGE」のトップとしてトランプ政権に入り込みました。
行政の無駄削減を目指す新組織「DOGE」の活動を象徴するチェーンソーの図解行政の無駄削減を目指す新組織「DOGE」の活動を象徴するチェーンソーの図解

トランプ氏はマスク氏への信頼が厚く、第二次トランプ政権として初めての外遊にもマスク氏を同行させました。マスク氏に批判が集まった際には、トランプ氏がテスラ車を購入して支援を表明したこともあります。トランプ氏はマスク氏を「何百億ドルもの不正や無駄を暴いてくれた」と称賛していました。

「信頼の証」として購入されたそのテスラ車は、今、ホワイトハウスの敷地内に停められています。アメリカメディアによると、トランプ氏は既にこの車の売却を決めたと言います。両者の決裂を受けて、マスク氏がCEOを務めるテスラの株価は5日、時価総額で日本円にしておよそ22兆円減少しました。

ホワイトハウス敷地内に停車している、かつてトランプ氏が購入したテスラ車ホワイトハウス敷地内に停車している、かつてトランプ氏が購入したテスラ車

関係悪化の決定打?NASA長官人事撤回

なぜ、これほどまでに両者の関係はこじれてしまったのでしょうか。政権を去る際、マスク氏は5月30日にワシントンで、「今後も大統領の友人、そしてアドバイザーであり続けます。必要があれば、いつでも大統領の力になりたい」と友好的な姿勢を示していました。

しかし、そのわずか4日後の6月3日、マスク氏は自身のXで一変した姿勢を見せ、「これ以上我慢ならない。巨額で法外で利益誘導的な支出法案は吐き気がするほど忌まわしい」とトランプ政権を激しく批判したのです。

この4日の間に一体何があったのか。そのヒントは、トランプ氏のSNSにありました。トランプ氏は5月31日、つまりマスク氏が政権を去った翌日に、「ジャレッド・アイザックマン氏のNASA長官への指名をこれにて撤回する」と投稿していたのです。

次期NASA長官として指名されていたアイザックマン氏は、マスク氏の友人で、マスク氏自身が強く推薦していた人物でした。トランプ氏は6月5日にワシントンで、アイザックマン氏について「マスク氏が彼を尊敬していたのは確かだ。しかし、NASAを運営するとなると適任だとは思えなかった」と述べました。さらに、アイザックマン氏が民主党支持者であることを、長官任命を取りやめた理由の一つとして挙げています。

複数のメディアは、このNASA長官人事の撤回が、マスク氏にとってトランプ氏を攻撃する決定打になったと報じています。世界トップを走るアメリカの宇宙事業を大きく支えているのは、他ならぬマスク氏の「スペースX」社です。
アメリカの宇宙事業を支えるイーロン・マスク氏のスペースX社のロケット発射イメージアメリカの宇宙事業を支えるイーロン・マスク氏のスペースX社のロケット発射イメージ

記者が6月6日に大統領専用機内で、「アメリカはマスク氏の企業なしでもやっていけると思いますか?」と質問した際、トランプ氏は「もちろんできる。アメリカはほとんど誰もいなくても生き残れる。私を除いては」と答えています。

マスク氏の反撃と新党設立の可能性

マスク氏は現在、トランプ氏に関する新たな直接的な発言は控えているようですが、自身のSNS(X)上で「新党を作るべきか」という賛否を問うアンケートを実施しました。その結果は8割が新党設立に賛成というものでした。マスク氏のこの言動の狙いは何なのでしょうか。

上智大学の前嶋和弘教授は、マスク氏の狙いについて解説しています。
トランプ氏とマスク氏の関係について解説する上智大学の前嶋和弘教授トランプ氏とマスク氏の関係について解説する上智大学の前嶋和弘教授「去年の選挙はトランプ氏圧勝でもなくて1.48ポイント差。今世紀最も競っている選挙でした。そこでトランプ氏が辛勝したのはマスク氏の影響力、特に激戦州では大きかった」と述べ、「自分が応援しないとトランプ政権は揺らぐんだ、共和党は揺らぐんだ、と言いたい」のがマスク氏の本音ではないかと分析しています。

トランプ氏に約422億円もの巨額な献金をしていたマスク氏。今後の二人の関係がどうなるかは、米国政界の大きな注目点となっています。

結論:相互依存関係の行方

トランプ氏とイーロン・マスク氏の蜜月は終わりを告げ、激しい対立が表面化しています。NASA長官人事撤回が一つの大きな要因と見られていますが、その影響はテスラの株価にも及びました。

今後の両者の関係について、前嶋教授は両者にとって完全な対立は得策ではないと指摘します。トランプ氏にはマスク氏の人的ネットワークと潤沢な資金というメリットがあり、一方マスク氏には政府の規制や契約という相互依存関係があります。そのため、両者が完全に決裂することは「なかなか考えにくい」と分析しています。

蜜月から一転、激しい対立へと発展したこの関係は、米国政治、そしてテクノロジー業界にも影響を与え続けるでしょう。今後の両者の動向から目が離せません。

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