トランプ米政権は不法移民の取り締まりを加速させている。特に、ロサンゼルスでは6日に大規模な摘発作戦が実施された。この背景には、政権発足後、米国への不法越境者数が激減する一方で、政権が目標とする強制送還者数が達成できていないことへの焦りがあるとみられる。
ロサンゼルスでの大規模摘発作戦とその混乱
米紙ロサンゼルス・タイムズが報じたところによると、米移民・関税執行局(ICE)の一部門である国土安全保障捜査局(HSI)は6日、ロサンゼルス市内のホームセンターなど、日雇い労働者が仕事を求めて集まる場所で摘発作戦を実施し、45人を逮捕した。逮捕に抗議する一部の人々が暴徒化し、捜査官が催涙スプレーを使用して制圧を試みるなど、現場は一時混乱に見舞われた。
ロサンゼルスの移民逮捕に抗議し拘束される人々(2025年6月6日、ロイター)
ロサンゼルス市長からの非難
ロサンゼルスのカレン・バス市長は、今回の摘発について「移民が多大な貢献をしてくれている街の市長として憤慨している。これは地域社会に恐怖を植え付ける手法だ」と強く非難する声明を発表した。
聖域都市を標的に、亡命申請者への強硬策
米紙ニューヨーク・タイムズの報道によれば、ICEは5月下旬以降、ロサンゼルスのような移民に比較的寛容な「聖域都市」を重点的に標的とし、取り締まりを強化している。亡命認定を受けるために裁判所を訪れた移民をその場で逮捕するなど、なりふり構わぬ強硬な作戦を展開しているという。
政権中枢からの圧力
米ニュースサイト・アクシオスは、スティーブン・ミラー大統領次席補佐官が5月下旬のICE会議で、逮捕および強制送還件数の少なさに不満を示し、1日あたり3000人の逮捕を指示していたと報じた。
越境者減少と強制送還目標未達
メキシコ国境における不法越境者数は、2月から4月にかけて月平均1万2000人に満たず、前年同期の月平均約18万6000人から大幅に減少した。しかし、米NBCニュースによると、同時期の強制送還者数も毎月1万人台にとどまっており、トランプ政権が年間目標とする100万人のペースを大きく下回っている状況だ。
取り締まり強化の背景と今後の動向
不法越境者の減少にもかかわらず、強制送還数を増やすことへの強い意欲が、今回のロサンゼルスでの大規模摘発をはじめとする一連の強硬策の背景にある。政権の焦りがうかがえる中、今後の移民取り締まりがさらに激化する可能性が指摘されている。
参照元
- Reuters
- Los Angeles Times
- New York Times
- Axios
- NBC News
- Yomiuri Shimbun