昭和時代の自動車税は本当に高かった?現代の収入と比較してわかる真の負担

毎年5月に送られてくる自動車税の納付通知書を見て、「結構高いな」と感じる方は多いでしょう。しかし、年配の方にその話をすると「昔はもっと高かったよ」と言われることがあります。果たして、それは単なる感覚なのでしょうか、それとも明確な事実なのでしょうか。本記事では、昭和59年(1984年)当時の自動車税額を排気量別に詳しく紹介し、さらに当時の平均収入と現代の平均収入に対する税負担の割合を比較することで、過去と現在の自動車税の「重み」を具体的に見ていきます。この比較を通じて、現在の自動車税負担が歴史的に見てどのような位置づけにあるのかを明らかにします。

現在の自動車税(種別割)は、排気量によって税額が細かく定められています。例えば、東京都主税局の情報を参照すると、排気量2.0L以下の自家用乗用車の場合、2019年9月30日以前に新車登録された車両(13年未満)では年額3万9500円です。毎年この金額を支払うことは、多くの自動車所有者にとって家計への負担となっています。しかし、この「高い」という感覚が、過去と比較してどうなのかを知ることは重要です。

祖父との会話で話題に上った自動車税の納付通知書を持つイメージ祖父との会話で話題に上った自動車税の納付通知書を持つイメージ

総務省の資料「自動車税について」によると、昭和59年時点の自動車税額は現代とは異なる税体系で、特に高額な設定が見られました。例えば、3ナンバー車のうち排気量3L超~6L以下では年額8万8500円、さらに6L超では14万8500円という非常に高い税額が課されていたのです。これは、排気量の大きい車が今よりも明確に「高級車」「贅沢品」と位置づけられていた時代の税水準と言えるでしょう。現代のように、初度登録から13年経過で税額が加算されるような制度がないにもかかわらず、この絶対額は現代の感覚からすると驚くほど高額です。

総務省資料に基づく昭和59年排気量別自動車税額一覧表(図表1)総務省資料に基づく昭和59年排気量別自動車税額一覧表(図表1)

金額だけを比較すると、確かに「昔の方が高かった」と感じるかもしれません。しかし、税金の負担感を測る上で重要なのは、当時の収入と比較して税額がどれだけの割合を占めていたかです。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を基に、年間給与(所定内給与を12倍したもの)に対する自動車税額の割合を計算してみましょう。

■ 昭和59年(1984年)
当時の所定内給与の平均は20万6500円でした。これを1年間(12ヶ月)に換算すると、年間給与は約247万8000円になります。

  • 5ナンバー・排気量1.5L超~2L以下(税額:3万9500円)の場合: 年間給与に対する割合は約1.59%
  • 3ナンバー・排気量3L超~6L以下(税額:8万8500円)の場合: 年間給与に対する割合は約3.57%

■ 現代(2024年)
現代の所定内給与の平均は約33万40円です。これを1年間に換算すると、年間給与は約396万4800円になります。(※賃金構造基本統計調査は毎年変動するため、概算として使用)

  • 排気量1.5L超~2L以下(税額:3万9500円 ※2019年9月30日以前登録13年未満)の場合: 年間給与に対する割合は約1.00%
  • 排気量3.5L超~4L以下(税額:6万6500円 ※同上)の場合: 年間給与に対する割合は約1.68%

この収入に対する税負担割合を比較すると、明確な違いが見えてきます。昭和59年の方が、特に排気量の大きい車、すなわち当時の高級車に対する税負担率が格段に高かったのです。現代の1.5L超~2L以下の負担率約1.00%に対し、昭和59年の同クラスは約1.59%。さらに、現代の3.5L超~4L以下の負担率約1.68%に対し、昭和59年の3L超~6L以下の負担率は約3.57%と、現代の倍以上の割合を占めていました。

結論として、絶対的な税額だけを見れば、特に大型車の自動車税は昭和時代に非常に高額なものがありましたが、当時の平均収入と比較した税負担の「重み」は、現代よりも昭和59年の方がはるかに大きかったと言えます。特に高級車を所有することは、現代以上に収入に対して重い税金が課される「贅沢」であったことが、この比較から明らかになります。「昔の方が税金が高かった」という言葉は、単に金額が高いというだけでなく、収入に対する負担感が大きかったという事実に基づいているのです。

参考資料:

  • 東京都主税局 自動車税種別割: [リンク先は記事の性質上省略します]
  • 総務省 自動車税について: [リンク先は記事の性質上省略します]
  • 厚生労働省 賃金構造基本統計調査: