〈18番まである「大阪で生まれた女」の歌詞は、時代の匂いを伝える。たとえば ♪踊り疲れたディスコの帰り 電信柱にしみついた夜♪ 印象的な歌詞は、どのようにして生まれたのか〉
子供のときから詩が好きで、師匠はゲーテであり、リルケでした。リルケの手法の一つが造形詩です。言葉で形をイメージさせる。言葉を聞いた人が何を感じるか、そこがものすごく大切なのです。「都会の片隅」と直接的に言うよりも「電信柱」の方が都会をイメージさせます。「マンホール」でも「スクランブル交差点」でもいいのですが、「電信柱」といったら、ちょっと文明を感じさせる。その電信柱には紙がべたべた貼ってあって、それが時間の経過とともにだんだん剥がれて、ちょっとだけ紙が残って、汚れているイメージ。それが「しみついた夜」です。その電信柱はディスコの横にある。練り上げて考えるんじゃなくて、瞬間的なものですけどね。聴いた人たちがすぐに映像を思い浮かべる。そんな歌をつくりたいと考えています。
〈7番の冒頭の歌詞は ♪ひかり32号に乗って 東京へと 涙がとめどなく流れつづけた♪ 大阪を捨てられないと言っていた女が決意し、男とともに東京へ出ていく〉
高校を卒業して上京したとき、自分自身が新幹線の何号車に乗ったかは覚えていません。これね、最初は「ひかり31号」だったのですよ。紳助(島田紳助)が、あるテレビ番組で、「BORO、これ18番まであるらしいやんか」って。「あるよぉ」って言って、スタジオにノート持っていったんですよ。それで ♪ひかり31号に乗って♪ と歌うと、「へえー」って言って。番組が終わってすぐに紳助から電話がかかってきました。「なんか視聴者から電話があって、ひかり31号は東京から大阪に向かう新幹線らしいで。大阪からは32号や」と。で、「そんなら書き換えるわ」って言って書き換えたのですよ。