「2025年7月 日本大災害」の噂、香港からの訪日客減少に影響か 発端は漫画の予言本

絶好調に見える日本のインバウンドですが、ある地域からの観光客が減少するという異例の現象が起きています。それは香港からの訪日客です。人口の3分の1以上が訪れ、過去最多を記録した2024年から一転、香港の航空会社は2025年5月以降、日本への直行便を減便。背景には、「2025年7月、日本で大災害が起きる」という根拠のない噂が爆発的に広まっていることがあるといいます。

訪日客は過去最多の一方で…香港からの観光客が減少する理由

日本政府観光局が2025年5月21日に発表した4月の訪日外国人数は390万人となり、単月としては1964年の調査開始以来、過去最多を更新しました。2024年4月と比較しても約3割増加しており、インバウンド市場は活況を呈しています。しかし、この全体の流れに反して、香港からの訪日客が減少傾向にあるという報告があります。香港の航空会社グレーターベイ航空は、搭乗客の減少を受けて、成田、大阪、仙台、徳島への直行便を2025年5月から減便しました。これは、2024年に香港の人口の3分の1以上に相当する人々が訪日し、過去最多となった状況からの大きな変化です。では、なぜ香港の人々は今、日本への旅行を避けているのでしょうか。

香港からの訪日客減少に影響を与える「2025年7月日本大災害予言」の噂が広がる様子を示すイメージ香港からの訪日客減少に影響を与える「2025年7月日本大災害予言」の噂が広がる様子を示すイメージ

広がる「2025年7月日本大災害」の噂

香港からの観光客への取材によると、日本への渡航を控える理由として、多くの人が「この本の予言」や「7月に大地震がある」といった「2025年7月に日本で大災害が起きる」という類の噂を挙げています。この根拠のない噂は香港社会で急速に拡大しているとみられ、年明けから大勢がこの予言について話していたという声や、「信じている人は非常に多い」「7割ぐらい」といった感覚的な意見も聞かれました。噂の入手に至っては、「半年前にYouTubeで見た」「ネットで翻訳版を読んだ」といったインターネット経由の情報伝達が語られています。

香港からの観光客が日本への訪問を避ける理由を問いかける写真(イメージ)香港からの観光客が日本への訪問を避ける理由を問いかける写真(イメージ)

「2025年7月大災害予言」の噂について語る香港人観光客「2025年7月大災害予言」の噂について語る香港人観光客

噂の発端は“予知夢”を描いた一冊の漫画

この「2025年7月日本大災害」という噂のきっかけとされているのが、1999年に出版された、たつき諒氏の漫画『私が見た未来 完全版』です。この作品は、作者自身が見たとされる予知夢や個人的な体験に基づいて描かれており、その中に後の出来事と関連づけられる記述があったことから注目を集めました。

噂の発端となった、たつき諒氏の漫画「私が未来を見た完全版」の書影(イメージ)噂の発端となった、たつき諒氏の漫画「私が未来を見た完全版」の書影(イメージ)

東日本大震災を“予言”? 科学的根拠なき内容がなぜ影響力を持つのか

漫画『私が見た未来 完全版』が「予言漫画」として広く知られるようになったのは、作中の一節「大災害は2011年3月」が出版から12年後に発生した東日本大震災の日付と一致していたと解釈されたためです。そして今回、香港で噂となっているのは、同書にある「日本列島の南に位置する太平洋の水が盛り上がる。その災難が起こるのは、2025年7月です」という部分です。しかし、これはあくまで作者のたつき氏が見た「夢の話」として描かれたものであり、科学的な裏付けや根拠は一切ありません。にもかかわらず、過去の記述が現実の災害と結びつけられたことで生まれた「予言」というイメージが先行し、特にインターネットやSNSを通じて、科学的根拠のない情報が国境を越えて拡散し、人々の行動(この場合は旅行控え)に影響を与えるという現象が生じています。

漫画「私が未来を見た完全版」で過去に「予言」されたとされる東日本大震災に関連するイメージ漫画「私が未来を見た完全版」で過去に「予言」されたとされる東日本大震災に関連するイメージ

「2025年7月日本大災害予言」の噂を信じる人が多い現状を示す写真(イメージ)「2025年7月日本大災害予言」の噂を信じる人が多い現状を示す写真(イメージ)

結論

近年のインバウンド好調の中で、香港からの訪日客減少という特異な状況は、インターネット上で拡散される根拠のない情報、特に災害に関する噂が、人々の心理や国際的な人の移動に現実的な影響を与えうることを示しています。「2025年7月、日本で大災害が起きる」という噂は、特定の漫画に記された「夢の話」が発端であり、科学的根拠は確認されていません。それにもかかわらず、この情報が多くの人に信じられ、香港からの日本行き航空便の減便という具体的な事態に至っている状況は、デマや誤情報の拡散とその影響の大きさを浮き彫りにしています。正確な情報に基づいた冷静な判断が求められます。