訪日外国人 税負担増か?免税廃止・出国税引き上げ論議

日本の政府・自民党内で、訪日外国人に対する税負担を増やす案が浮上しています。具体的には、外国人観光客が日本で購入した品物にかかる消費税の免税を廃止したり、出国時に支払う国際観光旅客税を引き上げたりするという内容です。この議論は、自民党内の主要な政治家が主導し、経済界や国民の間でも注目を集めています。

議論されている具体的な案

自民党の麻生太郎最高顧問は5月下旬の勉強会で、外国人観光客に対する消費税免税を原則廃止する方向で提言案をまとめました。

また、自民党の吉川有美参議院議員は先月、2019年に導入された国際観光旅客税(出国時に1人1000円)について言及。オーストラリア(約6500円)やエジプト(約3500円)、米国(約3100円)など他国に比べて低い水準であるとし、引き上げの必要性を訴えました。これに対し、石破茂首相は参議院予算委員会で「ふさわしい対価をもらうのは納税者への義務」として検討する旨を答弁しています。

なぜ今、増税案が浮上したのか

外国人観光客への税負担増が検討され始めた背景には、複数の理由があります。

理由1:家計負担軽減策の財源確保

7月の参議院選挙を控え、野党を中心に消費税減免など家計負担軽減の声が高まっています。自民党の森山裕幹事長は消費税減免に反対する姿勢を示しており、十分な財源がない状況です。日本経済新聞は、与野党が家計の負担軽減を競い合う中で、「反発を受けにくい方策」として訪日外国人に税負担を求める案が浮上していると伝えています。

理由2:観光公害(オーバーツーリズム)への対策

観光客が特定の地域に集中することによる観光公害被害を訴える声が高まっています。これを受け、地方自治体も独自に対策を強化しています。大阪府は9月から宿泊税を最大200円引き上げることを決定(現行の1泊7000円以上の課税基準を5000円以上に見直し)。京都府も宿泊税を現行の最大1000円から最大1万円まで徴収できるよう、条例改正を検討中です。

理由3:免税制度の悪用(転売)問題

麻生氏の提言案では、外国人観光客による家電製品や医薬品などの大量購入、いわゆる「転売」が議論されました。こうした行為は、「われわれが目指す観光立国の姿とは異なる」と指摘されています。政府は転売防止のため、2025年11月から、日本国内で購入した製品の国外搬出を確認した後に消費税を払い戻す形に制度を変更する予定です。しかし、こうした対策に加え、免税廃止などの案が実際に導入されるかは不透明な状況です。

訪日外国人観光客が多く訪れる東京の店舗で、免税品などを点検する様子訪日外国人観光客が多く訪れる東京の店舗で、免税品などを点検する様子

結論として、訪日外国人に対する免税廃止や国際観光旅客税引き上げ案は、参院選前の財源確保、オーバーツーリズム対策、転売問題への対応など、複数の理由から政府・自民党内で活発に議論されています。これらの案が最終的にどのように導入されるかは、今後の検討次第であり、依然として不透明な状況です。

参照:日本経済新聞、Yahoo!ニュース(聯合ニュースより)