ブラジル・セハード地域で希少なクロジャガーを初確認:生態系保全の希望の光

ブラジル、ゴイアス州のトンバドール山地自然保護区で、希少なクロジャガーが初めて確認されました。この黒い毛皮を持つジャガーは、通常のジャガー(Panthera onca)の変異種であり、種のわずか10%にのみ現れる遺伝子変異によるものです。今年の3月から5月にかけて、カメラトラップによって初めて捉えられたこの画像は、環境省の条例第148/2022号により「絶滅危惧種」に分類されているジャガー、特に希少なクロジャガーの保護にとって極めて有利な指標となります。

トンバドール山地自然保護区のカメラトラップが捉えた希少なクロジャガー (ブラジル)トンバドール山地自然保護区のカメラトラップが捉えた希少なクロジャガー (ブラジル)

メラニズムとは:クロジャガーの遺伝的特徴

メラニズムは、動物の毛皮の色を濃くするメラニンの生成を増加させる遺伝子の変異です。自然保護専門家ネットワーク(RECN)のメンバーである生物学者のホベルト・フスコ氏は、「メラニズムのジャガーが生まれるためには、両親の少なくとも一方がこの特徴を持っていなければならない」と説明しています。この遺伝的特徴を持つ個体の確認は、その地域にこの希少な遺伝子が受け継がれていることを示唆しています。

生態系保全の指標としてのジャガーの存在

専門家たちは、これらのジャガーの存在が、その地域と環境の保全が効果的に機能している証であると強調しています。フスコ氏は、「ジャガーは、広大な生息域を必要とするアンブレラ種(傘種)です。ジャガーを保護することは、他の多くの動植物種、ひいては生態系全体に良い影響をもたらします」と述べています。つまり、ジャガーが生息できる健全な環境は、他の多くの生物にとっても暮らしやすい環境なのです。

地域社会への影響と保護への貢献

トンバドール山地自然保護区の代表であり生物学者のマリアーナ・ヴァスキス氏は、今回の記録が地域社会の自然保護への関心を高めることに貢献すると期待を寄せています。「こうした希少動物の記録は、保護区周辺に住み働く人々の大きな注目を集め、私たち全員が自然環境を良好に保全し続ける努力をする必要があるという強いメッセージとなります」とヴァスキス氏は語っています。

ジャガーの生息状況と直面する脅威

ジャガー(オンサ・ピンターダ)はアメリカ大陸最大のネコ科動物であり、ブラジルでは主にアマゾン地域とパンタナウ地域に集中して生息しています。パンパ地域では絶滅したと考えられており、今回の発見地であるセハード地域や、カーチンガ地域、大西洋岸森林地域など他の生物群系では、より少なく分散して生息しています。

ジャガーが直面している主な脅威は、森林伐採による生息地の喪失です。また、家畜や家禽類を襲う可能性からくる報復的な狩猟や、気候変動の影響も深刻です。ヴァスキス氏は、「セハード地域においては、交通車両に轢かれてしまうケースも深刻です。これはジャガーだけでなく、この生物群系に生息する多くの野生動物にとって共通の問題です」と付け加えています。

保護区と生態学的回廊の重要性

ジャガーは、食料、隠れ家、安全、繁殖地を求めて長距離を移動する動物です。フスコ氏は、「彼らは単独行動を好み、2歳になるまで母親と行動を共にします。そして5万ヘクタールを超える広大なエリアを移動することができます」と説明しています。この広大な行動範囲を考慮すると、自然保護区の強化と、異なる保護区間をつなぐ生態学的回廊の整備が、ジャガーだけでなく様々な野生動物種の保護を確実にする上で非常に重要となります。

トンバドール山地自然保護区について

今回のクロジャガーが確認されたトンバドール山地自然保護区は、8730ヘクタールの保護区域です。これは私有自然遺産保護区(RPPN)の一つとして、ボチカリオ・グループ自然保護財団によって創設され、20年間にわたり維持されてきました。一般公開はされておらず、生物多様性保全、火災生態学、統合火災管理(IFM)などを研究する研究者のみを受け入れています。現時点で、この保護区では437種の植物と531種の動物が記録されています。

この保護区は、水資源の保護、気候調節、土壌炭素隔離に貢献しており、自然に基いた問題解決策(NBS)として位置づけられています。また、近隣のシャパーダ・ドス・ヴェアデイロス地域の野生生物保護を補完する重要な役割も担っています。

出典:Agencia Brasil、構成:麻生雅人