「年収103万円の壁」引き上げなどを掲げ、2024年の衆院選での躍進を経て、一時的に野党第1党に匹敵する支持率を示していた国民民主党は、ここ最近、その勢いに陰りが見られるとの見方が出ている。この背景には、夏の参院選に向けた候補者擁立、特に比例代表候補者の選定を巡り、インターネット上を中心に強い批判が相次いでいることがある。中でも、元衆院議員である山尾志桜里氏の公認擁立は大きな波紋を呼び、過去の行動に対する厳しい声が再び高まっている。
山尾志桜里氏の出馬表明と釈明への動き
山尾志桜里氏は6月4日未明、自身のSNSに「初心に立ち返ろう。自分の言葉で丁寧に説明を尽くそう。その上でなお国政で貢献したい思いをまっすぐ伝えよう。その決意が固まった」と投稿し、参院選比例代表からの立候補を表明した。投稿の中で、彼女は2009年当選同期会での仲間からの温かい励ましに触れている。山尾氏の立候補に対しては、インターネット上を中心に、過去に問題視された行動を巡る批判が噴出しており、公認発表後まだ記者会見を行っていないことへの説明責任を求める声が高まっていた。
その約14時間後、山尾氏は改めてSNSを更新し、「出馬会見をさせてください」と投稿した。彼女は、会見を躊躇していた理由として、「決定当初は自然体で会見を設定していたが、その後、私の発信や会見が党に与える影響を読むことができず、躊躇していた」ことや、「個別の取材対応より会見は影響が大きいので控えてほしいという声も届いており、その気持ちも痛いほど分かった」ことを説明した。しかし、「繰り返し丁寧に説明するという普通のことをやれてなかった自分と向き合い、猛省した」とし、玉木代表や幹事長がそれぞれ自身の記者会見で会見を「すべき」と述べていることを知り、「背中を押して頂いた。先送りすべきではない」との決意に至ったと綴った。
国民民主党からの参院選出馬を表明し、会見への決意を示す山尾志桜里氏
国民民主党、問題視される候補者の公認を決定
国民民主党は5月14日の両院議員総会で、山尾氏のほか、須藤元気元参院議員、足立康史元衆院議員らを夏の参院選比例代表の公認候補とすることを決定した。これら3氏は、それぞれ立憲民主党や日本維新の会など、異なる党派に所属していた元国会議員である。玉木代表ら党執行部は、候補者たちが政策などについて国民民主党の方針に従う旨を記した確認書の提出を条件に、公認に踏み切った。これに対し、インターネット上を中心に批判が相次いだが、特に強い反発を招いたのが山尾氏の擁立であった。
過去の問題行動と国民民主党の判断
公認された山尾氏、須藤氏、足立氏については、過去に様々な問題が指摘されている。須藤氏は原発やワクチン政策に関する発言、足立氏は他党への批判などを巡り、国会で懲罰動議が提出された経緯がある。しかし、インターネット上で特に大きな批判を浴び、世論の厳しい目が向けられているのが山尾氏のケースである。
山尾氏は、玉木代表と同じ2009年の衆院選で初当選を果たした同期であり、「保育園落ちた 日本死ね」の匿名ブログを国会で取り上げ、一躍脚光を浴びた経緯がある。当時の筆者は民主党や民進党の担当記者として、党内に加え、支持団体である連合の関係者から、彼女の将来に多くの期待が集まっていたことを覚えている。彼女は当時の民進党で政調会長に抜擢されるなど、党の主要メンバーとしての地位を確立していった。
2009年の第45回衆院選で初当選し、初登院した頃の山尾志桜里元議員
しかし、彼女が支部長を務める政党支部で、2012年の1年間に約230万円分のガソリン代が計上されたとされる「地球5周分のガソリン代」疑惑が報じられ、政治資金の使い道を巡る厳しい批判に晒された。さらに、新たな代表に前原氏が選出された矢先の民進党で幹事長に就任する予定だった際には、既婚男性との不倫疑惑が報じられ、幹事長就任が見送られた上に、最終的に離党に追い込まれる事態となった。この一連の出来事は、新たな執行部が発足したばかりの民進党に計り知れないダメージを与え、その後、党の分裂を招いた「希望の党騒動」の一因になったとも指摘されている。当時のある党幹部は、山尾氏の問題による民進党の動揺を見た安倍首相が、ここがチャンスだと見て衆院の解散総選挙に踏み切ったとし、「すきを見せて選挙を誘発させたという意味では、党を分裂させた戦犯の一人だ」と、強い憤りを露わにしていたことを思い出す。
その後、山尾氏は立憲民主党などを経て国民民主党に入党し、15人の国会議員が参加した現在の国民民主党の結成メンバーにも名を連ねた。しかし、2021年には「私には政治家とは別の立場で新しくスタートしたいことがある」として、一度政界を離れていた。このように、過去に大きな騒動や批判の中心となった人物を、今回の参院選の比例代表候補者として再び公認した国民民主党執行部に対し、特にインターネットユーザーからの厳しい目が向けられており、今後の選挙に向けた党の姿勢が問われている。
今回の国民民主党による参院選比例代表候補者の選定、特に過去に問題を抱えていた元議員の擁立は、党内外に波紋を広げている。勢いに陰りが見え始めたとされる状況の中、候補者自身による過去の問題に対する丁寧な説明責任と、それを受け入れた党執行部による判断理由の透明性確保が、今後の国民民主党が世論の支持を再び獲得し、勢いを維持できるかどうかの重要な課題となるだろう。
[Source] FNNプライムオンライン via Yahoo News (https://news.yahoo.co.jp/articles/82a033f3ba3d2ec1e4771347ca0e6ba91dae5428)