スマホ保護フィルム貼り付け、職人いらず?全自動自販機「フィルラボ」が話題に

やっと手にした最新モデルのスマートフォン。ピカピカのボディーを見ると「大事に扱わなきゃ」との思いを新たにするものの、多くの人が頭を悩ませるのがスマホの保護フィルムの貼り付けだ。ホコリや気泡が入らずきれいに貼るのは至難の業で、「風呂場で全裸でやるといい」といったまことしやかな説までささやかれるほど。そんなユーザーの苦労を解消するかもしれない、全自動で保護フィルムを貼り付けてくれる自動販売機が今、注目を集めている。

話題の自動販売機「フィルラボ」とは

この革新的なサービスを提供する自販機は「フィルラボ」と名付けられている。米アップル社のスマートフォン、iPhoneへの保護フィルム貼り付けに特化し、全自動での作業を可能にした。その存在は、X(旧ツイッター)への投稿をきっかけに広く拡散。「自販機の中に職人がいるのでは」とユーモラスな憶測を呼ぶなど、大きな話題となっている。

「自販機マニア」も驚き、反響は1300万PV超

フィルラボをSNSで紹介し、一躍話題の火付け役となったのは、「自動販売機マニア」として知られる石田健三郎さんだ。日頃から各地のユニークな自販機をSNSで発信し、フォロワー3万人超を持つインフルエンサーである石田さんは、東京・新宿で偶然フィルラボを発見したという。

フィルラボを目にした際の率直な感想を、石田さんは「ついにここまで来たか」と語る。「これまでたくさんの自動販売機を見てきましたが、形ある商品ではなく『保護フィルムを貼る』というサービスを提供する形式は非常にレアケースです」。スマートフォン本体のクリーニング、保護フィルム代、そして貼り付け代が全て込みで2980円という価格設定にも触れ、「非常にお得だと感じました」と評価する。

石田さんの投稿は瞬く間に拡散し、9日時点で1300万回以上閲覧されるほどの反響となった。コメント欄には、自販機内で職人が作業している様子のイメージ画像や、実際に利用してみたユーザーからの体験動画などが多数寄せられている。

投稿への大きな反響について、石田さんは「みんな保護フィルムの貼り付けにそんなに苦戦していたのか!というのが正直な感想です」と驚きを隠せない。さらに、「貼るのが苦手なので助かる」「地元にも置いてほしい」といった設置場所の拡大を望む声が多く寄せられていることから、「革新的なサービス機器であるため、個人的にはさらなる拡大を望んでいます」と期待を寄せた。

スマホ保護フィルム貼り付け、職人いらず?全自動自販機「フィルラボ」が話題に

新宿マルイ本館前に設置された、スマートフォン保護フィルム自動貼り付けサービス「フィルラボ」の自販機。側面に操作パネルが見える。

運営会社に聞く:開発経緯と設置場所

フィルラボの運営は、通信事業や小売業を手がける「グローバルコネクション」(本社・埼玉県和光市)が行っている。同社の川村祐貴・国内営業本部長(38)によると、現在、東京・新宿マルイ本館をはじめ関東を中心に、全国11カ所の商業施設に設置されているという。

自販機本体のサイズは、幅1メートル、奥行き0.92メートル、高さ1.75メートルと、確かに「職人」が入れるのでは、と思わせるような大きさだ。しかし、実際にその内部はどうなっているのだろうか。川村氏によると、スペースの半分ほどはフィルムを貼り付けるための精巧な機械が占め、残りの半分は最大3840枚もの保護フィルムを収納できる在庫スペースとなっている。

この機器は、一部機種を除くiPhoneにのみ対応している。選択できる保護フィルムは、反射防止、のぞき見防止など3種類。料金は2480円から2980円で、フィルム代と貼り付け作業費が含まれる。支払いはキャッシュレス決済のみに対応している。

実際にどう動く?利用手順と記者の体験談

フィルラボの利用手順は非常にシンプルだ。まず、本体正面のモニターを操作して、使用しているiPhoneの機種と希望する保護フィルムの種類を選択し、決済を行う。次に、iPhone本体からケースなどの付属品を全て外し、挿入口にあるトレーにセットする。

トレーが内部に取り込まれると、機内で自動的に画面のクリーニングが始まり、ホコリを飛ばすためのエアが吹き付けられる。その後、搭載された人工知能(AI)がスマートフォンの正確な位置を認識・調整し、しっかりと固定。振動による貼り付け不良を防ぐため、電源ボタンが長押しされてスリープ状態にされるといった細かな配慮も施された上で、保護フィルムが貼り付けられる仕組みだ。一連の作業はわずか2分ほどで完了するという。

記者は実際にフィルラボを体験してみた。画面操作は直感的で分かりやすく、スムーズに進んだ。iPhoneをトレーに置いて中に挿入されると、確かに内部からホコリを飛ばすような風の音が聞こえた。待つこと約2分、再びトレーに乗って出てきたiPhoneの画面を見て驚いた。既に貼られていた古いシールをはがすと、画面はピカピカ。フィルムが貼ってあるのかどうか、一見しただけでは分からないほど、隅々まで完璧に貼り付けられていた。

新宿に設置されているフィルラボを利用したという東京都内の男性会社員(43)は、「すごく楽でいいですね。このフィルムが長持ちするなら、今後もぜひ利用したいです」と、仕上がりの質と手軽さに満足している様子だった。

日本での展開と今後の展望

フィルラボの開発は中国のメーカーが行っており、既に台湾やオーストラリア、ヨーロッパの一部地域でも設置されているグローバルな機器だ。グローバルコネクションの川村氏は、メーカーからの商品紹介を受けた際、「保護フィルムを自分で貼ることの難しさや煩わしさは、多くのスマートフォンユーザーが感じている課題。特にアップル社製スマホが絶大な人気を誇る日本では、高い需要が見込める」と判断し、日本での展開を決めたという。

日本市場向けにデザインなどを一部改良し、昨年12月にさいたま市内で初の設置を行ったのを皮切りに、徐々に設置台数を増やしてきた。今回のSNSでの大きな話題は、フィルラボの認知度を一気に高めた。話題となった直後、新宿の店舗での利用数はそれまでの7倍に急増したという。新たな設置場所に関する企業からの問い合わせや、個人からの「自宅近くに置いてほしい」といった要望も多数寄せられており、7月には設置場所が現在の倍近い20カ所ほどに増える見込みだ。

川村氏は「フィルラボが応えるのは、もしかしたらニッチな需要なのかもしれません。しかし、実際に使っていただければ、その手軽さや仕上がりの質の良さは必ず分かっていただけるはずです。ぜひ一度試してみてほしいです」と語り、より多くの人にこのサービスを知ってもらい、体験してほしいとアピールした。

関連サービス:オリジナルケース自販機も

グローバルコネクションは、保護フィルムの貼り付けサービスに加えて、2024年6月からはiPhone用のオリジナルスマートフォンケースをその場で作製できる自動販売機の提供も開始している。

このサービスでは、ユーザーがアップロードした画像をわずか3分でスマホケースに印刷できるという。Z世代やファミリー層、さらにはインバウンド(訪日外国人)観光客からの需要も見込んでおり、川村氏は「自分でケースを作る面白さ、体験価値を感じてもらいたい」と話し、新たな収益の柱としても期待を寄せている。

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