石破茂首相は「今日より明日は良くなる日本」を掲げるが、現実には国民の負担増を招く政策が進められている。年金改革に続き、今度は医療費改革だ。自公維3党間で合意され、「骨太の方針」に明記されたこの改革は、国民負担軽減を謳いながら、特にOTC類似薬の保険適用除外により、家計に大きな負担をもたらす可能性が指摘されている。
OTC類似薬の保険適用見直し:政府の狙いと国民への影響
OTC類似薬とは、ドラッグストアでも購入できる市販薬(OTC)と類似する成分の医療用医薬品を指す。現在、これらは医師の処方により保険適用され、患者負担は3割ほどで済む。政府は保険適用外とすることで、医療費1兆円削減を目指すとする。しかし、これは健保財政や国庫負担を減らす一方で、患者は保険適用されない高価な市販薬を自己負担で購入せざるを得なくなることを意味する。結果、国民の医療費負担は実質的に増加する。
医療費改革合意に関与した石破首相、前原維新共同代表ら
具体例で見る患者負担の衝撃的な増加額
保険適用外となると、患者負担はどう増えるか。胃潰瘍などに用いられる「ガスター10」は、処方薬(3割負担)が30日分約217円なのに対し、市販薬(同成分)は約8690円(30日分換算、希望小売価格)と、約40倍に。湿布薬の「ロキソニンテープ」も約36倍に。他のよく使われるOTC類似薬でも負担増は顕著だ。「ムコダイン去たん錠Pro500」は約49倍、解熱鎮痛薬「ロキソニンS」は約20倍、鼻炎・花粉症薬「アレグラFX」は約9倍となる。これらの数字は、「今日より明日は負担が重くなる」現実を示す。
難病・慢性疾患患者への深刻な影響と懸念の声
OTC類似薬保険適用除外は、症状に苦しむ患者には死活問題となりうる。全国保険医団体連合会の本並省吾事務局次長は、「軽微な症状の薬は保険適用をやめても大丈夫という安直な発想だが、医療現場の実態とは異なる」と指摘する。難病や慢性疾患で、長期治療や副作用対策でこれらを常用する患者は多いからだ。実際、難病指定の皮膚病を持つ息子の家族は、処方薬で月々の医療費が薬代込み約2000円だが、保険適用外となると薬代だけで月約6万円以上の負担増になると訴えている。患者団体は保険継続求め、8.5万人の署名を6月厚労省へ提出した。これらの声は、特定の患者層に改革が重い負担を課す現実を示唆する。
こうした具体例や現場からの声は、政府の医療費改革が、常用薬が必要な患者にとって、医療アクセスを阻害しかねない深刻な負担増を招く可能性が高いことを浮き彫りにした。今後の政策の行方とその国民生活への影響が注視される。