ロシア、ウクライナ攻撃に「報復」開始か プーチンの制約と今後の焦点

3年以上にわたり、ロシアは自軍の爆撃機を投入し、ウクライナ全土に激しい空爆を続けてきた。これに対し、ウクライナ軍は今月1日、これらの爆撃機を標的とした大規模な反撃を実施した。「クモの巣」作戦と名付けられたこのドローン(無人機)攻撃は、1年半をかけて準備されたもので、ロシア国内に配備されていた爆撃機少なくとも12機を破壊する成果を上げた。この作戦はウクライナ国内の士気を大いに高めた一方、多くの国民はロシアからの厳しい報復を覚悟した。実際、ロシアのプーチン大統領は4日、トランプ米大統領に対し、ウクライナによる攻撃に対してロシアは「反応せざるを得なくなる」と述べ、報復を示唆していた。

ウクライナの「クモの巣」作戦とその影響

ウクライナのドローン攻撃は、ロシアの航空戦力という重要な軍事資産に直接的な打撃を与えた。長距離爆撃機は、ウクライナ各地への空爆において中心的な役割を担ってきたからだ。今回の成功は、ウクライナがロシア国内の標的を攻撃する能力を高めていることを示し、戦争の新たな局面を予感させた。ウクライナ国民の間では達成感が広がったものの、同時にロシアがどのような規模で報復してくるのかという懸念も高まった。

ロシアの初期報復と公式見解

プーチン大統領の警告に続き、ロシアは5日夜、初期段階とみられる報復攻撃を開始した。首都キーウを含むウクライナ各地に対し、大規模なドローンとミサイルによる攻撃を実施したのだ。ロシア国防省はこれらの攻撃について、ウクライナの「テロ活動」に対する「対応」であると説明し、報復措置としての性質を強調した。しかし、ウクライナによる前例のない規模の爆撃機攻撃に対するロシアのこれまでの反応は、プーチン大統領が戦争をさらに激化させる能力について疑問を投げかけている専門家もいる。

ウクライナへの報復を示唆するロシアのプーチン大統領ウクライナへの報復を示唆するロシアのプーチン大統領

プーチンの報復能力と政治的制約

専門家は、ロシアが報復の規模や性質を決定する上で、プーチン大統領がいくつかの制約に直面していると指摘する。その一つが政治的な制約だ。米戦争研究所(ISW)のロシア専門家、カテリーナ・ステパネンコ氏は、ウクライナの「クモの巣」作戦のような大規模かつ革新的な攻撃に対し、ロシアが目立った報復をすれば、それはウクライナがロシアに深刻な損害を与えたことを認めるに等しいと分析する。クレムリン(ロシア大統領府)はこれまで、戦争の状況がロシアにとって不利であるという印象を与えることを極力避けてきた経緯がある。

4日のプーチン大統領とトランプ氏の電話会談に関するロシア国営メディアの報道は、この政治的制約を示唆している。報道では、ウクライナの攻撃に対するプーチン氏の「反応」に関する約束についてはほとんど触れられず、代わりにトルコ・イスタンブールでの最新の和平協議の結果に焦点を当てていた。ステパネンコ氏はCNNに対し、これは意図的な戦略の一環だと説明する。プーチン氏は今回の爆撃機被害という失敗を隠したいと考えており、目立った報復行動はクレムリンのこうした情報戦略と矛盾を生じさせてしまうためだという。

まとめ

ウクライナによるロシア国内の爆撃機への大規模ドローン攻撃は、紛争の新たな局面を開いた。これに対し、ロシアは初期的な報復攻撃を行ったものの、その規模や今後の展開については不確実性が残る。ロシア国内の強硬派は厳しい報復を求めているが、プーチン大統領はウクライナの成功を認めることに繋がりかねない大規模な反応を避けるという政治的制約に直面している。ウクライナ国民は、既に行った報復による打撃が最悪のものなのか、それともこれからさらに厳しい状況が待っているのか、判断しかねている状況が続いている。

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