老後資金や老後破産といった言葉をよく聞くようになり、自身の老後資金に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。特に子育て世代の日本のサラリーマンにとって、教育費と将来のための貯蓄の両立は大きな課題です。今回は、厚生労働省のデータなどを基に、日本のサラリーマンが直面する家計の現実を探ります。
老後の経済的不安を抱えるイメージ画像
課長職でも厳しい日本のサラリーマン家庭
都内に住む山本さん(仮名、50歳)は、5人家族を支える企業の課長職です。月給50万円、手取りで約40万円弱の収入がありますが、この金額でも家族が安心して暮らすには十分とは言えません。親から相続した家があるため住宅ローンの負担はないものの、家計を圧迫しているのは3人の息子の教育費だと語ります。
3人の子どもの教育費が家計の重圧に
長男は大学4年生、次男は大学1年生で、二人とも文系学部に通っています。年間学費はそれぞれ100万円を超え、大きな負担となっています。さらに三男は高校3年生で、大学受験を控えており、今後さらに教育費の負担が増える見込みです。教育にお金がかかることは覚悟していましたが、想定以上の高額さに驚いていると言います。文部科学省の調査によれば、私立大学の年間平均学費は約120万円、国公立でも約53万円がかかります。複数の子どもが大学に通う家庭にとって、これは避けられない大きな経済的負担です。
リアルな家計内訳:毎月の収支はほぼゼロ
山本さんの大まかな家計内訳は以下の通りです。
- 住宅費: 0円 (相続済みのため)
- 教育費: 20万円
- 生活費: 10万円
- 医療費: 2万円
- 老後の貯蓄: 3万円
- その他支出: 3〜4万円
合計すると毎月の収入はほとんど使い切り、家計の収支はほぼゼロに近い状態です。「課長という役職でも、5人家族を支えながら将来のために貯蓄するのは本当に厳しい」と山本さんは現状を語ります。
平均的な課長給与でも手取りは大きく減少
厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」(令和6年)によると、課長級の平均月給は約51万2,000円です。山本さんの月給50万円は、この平均とほぼ同水準と言えます。しかし、額面から社会保険料や税金が控除されると、手取りは約40万円弱となり、額面との差が大きいのが実情です。山本さんは「年収1,000万円あっても、手取りは600万〜700万円程度と聞きます。年々社会保険料や税金負担が増え、生活はどんどん厳しくなっていると感じます」と話します。
妻のパート収入も限界が
妻も家計を助けるため、近所の食料品店でパート勤務をしています。年収103万円の壁を意識しながら働いていますが、「時給1,100円で、月10万円程度の収入です。体力的にもきつく、これ以上働くのは難しいと感じています」と疲労を覗かせます。長年専業主婦だったため、パソコンを使ったオフィスワークなどは苦手で、できる仕事の選択肢も限られているため、老後の資金のためにと分かっていても続けるのが大変な状況とのことです。
課長クラスでも直面する日本の家計と老後資金の課題
山本さんのケースは、日本の多くのサラリーマン家庭が直面している厳しい現実を浮き彫りにしています。平均的な収入を得ている課長職であっても、複数の子どもがいる場合、教育費の負担が重くのしかかり、日々の生活費に加え、将来の老後資金を十分に貯蓄することが極めて困難になっています。社会保険料や税負担の増加、物価上昇などが家計をさらに圧迫する中、「下流老人」や「老後破産」といった言葉がより現実味を帯びて感じられるようになっています。日本のサラリーマンが安心して老後を迎えるためには、家計の見直しはもちろんのこと、社会全体のサポートや経済状況の改善が求められています。