日本大学重量挙部の元監督である難波謙二容疑者(63歳)が、特待生として入学予定だった学生の保護者らから、本来免除されるはずの授業料などをだまし取った疑いで警視庁に逮捕されました。被害は2005年度にまで遡り、58人の保護者から総額5300万円以上を不正に受け取っていたことが明らかになっています。
日本大学重量挙部元監督、難波謙二容疑者の逮捕に関するニュース映像 – 学費詐欺容疑
逮捕容疑の詳細 – 虚偽書類で学費を請求
難波容疑者は、大学から特待生用の入学書類を受け取ったコーチに指示し、その中に含まれる振込用紙を悪用した疑いが持たれています。具体的には、金額を水増しした虚偽の書類を独自に作成し、保護者に対して正規の学費であるかのように請求。重量挙部の口座に振り込ませていたとみられています。虚偽の書類には「特待生として申請しています。『2年次以降』は徴収されません」と記載されており、初年度から減免されるべき学費を不正に要求する手口でした。2023年度に入部予定だった特待生の保護者4人から、合わせて205万円をだまし取った疑いが逮捕容疑となっています。
被害者の声 – OBの証言
特待生として入学した重量挙部OBの両親は、息子のためを思い、定期預金を解約するなどして200万円ほどを工面したといいます。このOBは「苦労して稼いだお金だと思うので、むかつきますよね。ありえない、教育者として」と、当時の心境と難波容疑者への怒りを語っています。被害がさらに広がる可能性も指摘されています。
判明した被害の全容 – 20年にわたり58人から
この不正行為は、去年夏に日本大学が公表したことで明るみに出ました。大学が調査を進めた結果、難波容疑者が2005年度以降、約20年間にわたり58人の保護者らから不正に金銭を受け取っていたことが判明。被害総額は5300万円を超えていました。日本大学は、昨年のうちに被害者全員への返金を完了したとしています。被害を受けたOBは「返金が来たので、何かしら徴収されていたのだと思う」「(当時は)全く気づきませんでした」と話し、返金によって初めて不正に気づいたことを示唆しました。
難波容疑者の否認と金の使途
日本大学で生物資源科学部の教授も務めていた難波容疑者は、調べに対し容疑を否認しているとのことです。難波容疑者は「寄付金として、保護者の了解を取り付けてもらったお金という認識でした。私的に使用した寄付金は一切ありません」と供述していると報じられています。一方、捜査関係者によると、だまし取ったとされる金は自身の研究室のキャビネットに保管されており、その多くは車の点検費用やコーティング代、スーツ、バッグ、香水などの個人的な支出に充てられていたとみられています。
元監督の評判と大学のシステム上の問題点
学生時代の卒業生からは、難波容疑者について「全然、練習は見に来ない。王様みたいな感じで、どのコーチ陣も、いち早く、監督の機嫌を取らないといけないみたいな感じだった」「難波監督は、本当に一番上の会長みたいな立場。誰かしらコーチに指示をして(虚偽の書類を)作らせていたんじゃないか」といった証言が出ています。また、日本大学には特待生の種類が複数ありますが、新入生に対して自分がどの特待生として合格したのかの通知がなかったことが、不正な請求が発覚しにくかった一因になったと捜査関係者はみています。さらに、インターハイ優勝クラスの実績を持つ学生ではなく、ベスト4からベスト8程度の中堅クラスの学生保護者が被害に遭っている印象だとOBは話しており、実績が顕著な場合は不正が露見しやすいと考え、敢えて中堅層を狙った可能性も指摘されています。
大学側の対応と他の運動部での類似事案
日本大学は、難波容疑者の不正行為について「本学の社会的信頼を失墜させたことは、痛恨の極みであり、本学として社会に対し、深くおわびを申し上げるとともに、同人に対し、引き続き、厳正に責任追及を行います」とのコメントを発表しました。なお、日大では他の運動部でも、本来特待生が支払う必要のない費用を保護者から徴収していた類似の事案が確認されており、合わせて54人の保護者らに6800万円あまりを返金したことが明らかにされています。
今回の元監督逮捕は、日本大学における一連の不祥事に加え、スポーツ推薦制度や特待生制度における学費徴収の不透明性、そして組織的なガバナンスの問題点を改めて浮き彫りにする形となりました。