なぜ参政党と神谷宗幣代表に若い世代が共鳴するのか 私たちはいま崖っぷちにいる 北原みのり


【写真】演説する参政党の神谷宗幣代表

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 都内の某駅前でオレンジ色のシャツを着た女性(30代半ばごろと思われる)が参政党のビラを配っていた。通り過ぎる人を一人一人覗き込み、目を合わせながら、ハキハキと大きな声で「参政党です! よろしくお願いします!」とビラを渡している。受け取る人はほとんどいないが、それでも声のトーンは元気だ。応援したい党や候補者がいる選挙はさぞかし楽しいことだろう。この夏を政治活動に没入することに決めた人のキラキラ感はとても強い。

 参政党の支持者には子育て世代の女性が一定数いるという。実際のところはわからないが、確かに街角で見かける参政党のサポーターは「年寄りではない」。その昔、安倍さんに熱狂した日の丸を振る男たちとも少し違う。維新に傾倒する男たちのどことなくオラついた感じとも違う。都知事選で石丸伸二氏を支持したスマートな高学歴エリート好きな人たちとも違う。

 参政党は、どこか明るいのだ。国を憂える割に悲壮感がなく、地方に生きる人たちの地に足ついた感がある。参政党に関わっている人たちの高揚感がそう見せるのだろうか。数年前まで名前を知る人などほとんどいなかった政党が、今回の選挙の「主人公」になってしまうとみられるほどに10~40代の若い層の支持を集めている。

 知られているように、代表の神谷宗幣氏には問題発言が多い。天皇に側室を持たせたほうがいいとか、女は学校を卒業したら家庭に入って子育てするのもいいなど、少子化の原因を女の生き方に負わせることを堂々と言う。先日も神谷氏の「申し訳ないが、高齢女性は子どもを産めない」という言葉が問題になった。

 それでも世間の反応は、2007年に70代だった柳沢伯夫大臣(当時)が「女は産む機械」と発言したときや、2001年に60 代だった石原慎太郎都知事(当時)に「女性が生殖能力を失っても生きているのは無駄」と発言したときとは、少し空気が違う。あのときは女たちの怒りがうねりになっていくのを感じたが、今回はそこまでの勢いがない。権力者のジジイ(すみません)の暴言ではなく、超エリート男の言う上から目線の暴言でもなく、自身も小さな子ども3人がいる子育て世代の男の暴言は、行きすぎた熱弁程度に受け取られているということなのか。そして多分、比較的若い世代の女性がそんな神谷氏率いる参政党に共鳴するのだとしたら、それはやはり、今ここが、きつすぎるからなのだろう。



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