ウクライナのゼレンスキー大統領は10日の毎晩のビデオ演説で、首都キーウの歴史地区に位置するユネスコ世界遺産「聖ソフィア大聖堂」がロシアの攻撃により損傷したと強く非難しました。この由緒ある建造物への攻撃は、国際社会に衝撃を与えています。
聖ソフィア大聖堂への攻撃とゼレンスキー大統領の言葉
ゼレンスキー大統領によると、11世紀に建造された聖ソフィア大聖堂は、ロシアの攻撃によって外部の一部が崩落するなど損傷を受けたとされています。大統領は演説の中で、「本当に歴史を知っていて、キリスト教を知らないわけではない全ての人々にとって、聖ソフィアへの損傷や破壊の脅威でさえ絶対に容認できないことだ」と述べ、今回の攻撃が文化遺産や宗教的シンボルに対する重大な侵害であることを強調しました。
ウクライナの首都キーウにあるユネスコ世界遺産、聖ソフィア大聖堂の外観(2025年5月撮影)
ロシアの行動に対する大統領の批判
大統領はさらに、ロシアの姿勢を厳しく非難しました。「しかし、ロシアにとっては違う。(無人機の)シャヘドと赤いボタンに狂っている。大惨事こそが彼らの存在意義なのだ。彼らは何も生み出さず、何も残さない」と述べ、ロシアが建設的な価値を創造するのではなく、破壊と混乱を追求しているとの見解を示しました。これは、ウクライナの歴史や文化を無視し、軍事力に依存するロシアの戦略への強い批判です。
ウクライナの魂としての聖ソフィア
ウクライナのオレクサンドル・トチツキー文化相もまた、聖ソフィア大聖堂を「全ウクライナの魂」と表現し、「(ロシアは)われわれのアイデンティティーの核心を再び攻撃した」と述べました。聖ソフィア大聖堂は、ウクライナがキーウ・ルーシとして栄えた時代に建てられた、国民の歴史、文化、そして精神性の象徴です。この世界遺産への攻撃は、単なる建物の損傷にとどまらず、ウクライナという国家の根幹、そのアイデンティティーそのものへの挑戦と見なされています。
文化遺産保護の重要性
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、多くの歴史的建造物や文化遺産が攻撃を受け、破壊されてきました。聖ソフィア大聖堂のようなユネスコ世界遺産への攻撃は、国際法上の懸念を引き起こすだけでなく、将来世代から貴重な人類の遺産を奪う行為として、世界中から非難されています。今回の事態は、紛争地域における文化遺産保護の喫緊の課題を改めて浮き彫りにしています。
今回のロシアによる聖ソフィア大聖堂への攻撃疑惑は、ウクライナ側から激しい非難を浴びています。ゼレンスキー大統領や文化相が強調するように、この攻撃は単なる建築物への損傷ではなく、ウクライナの歴史、文化、そしてアイデンティティーに対する攻撃として捉えられています。国際社会は、紛争が続く中で文化遺産がいかに脆弱であるかを再認識し、その保護に向けた取り組みを強化する必要があります。