米国で不法移民対策デモ拡大、ロサンゼルスで略奪発生など混乱も

米国各地で不法移民取り締まりに反対するデモが広がりを見せる中、混乱も発生している。特にカリフォルニア州ロサンゼルスでは大規模な略奪が発生し、治安への懸念が高まっている。この事態に対し、トランプ大統領はデモ隊を強く非難し、州当局との間で緊張が高まっている。デモは全米の主要都市に波及しており、今後さらに拡大する可能性も指摘されている。

ロサンゼルスで発生した略奪被害

10日午前(現地時間)、米ロサンゼルスの中心部にある「宝石街エリア」では、ガラスの破片が散乱し、多くの商店が破壊され略奪された爪痕が生々しく残っていた。店舗のドアは壊され板で塞がれ、商品棚は空になっていた。このエリアのランドマーク的存在であるアップルストアにも「しばらく営業を中断する」との張り紙が見られた。これは、ロサンゼルスの都心で続く反移民政策デモの鎮圧に警察力が集中する間隙を突いて、前夜に発生した大規模な略奪行為の現場だった。

急遽警備員を雇い、被害状況を確認していた宝石店の経営者は、「略奪犯が集まり店を壊し、すべてを持ち去った」と語り、「夜中に財産が奪われるのを監視カメラで見ているしかできなかった状況に怒りを感じる」と憤りを露わにした。警察の対応について尋ねると、この経営者は「デモ鎮圧に警察が割かれており、略奪現場には警察官の姿はなかった」と述べた。「ロサンゼルスでは同様の略奪が繰り返されるため、店主は自ら警護員を雇うしかない状況だ」とも付け加えた。この日、宝石街の多くの店舗は追加被害を防ぐため休業し、警備員を配置したりショーウィンドーを板で覆ったりする措置を取っていた。

近隣住民からも不安の声が聞かれた。「夜中にバイクの騒音とガラスの割れる音で眠れなかった」という住民は、「狂った略奪者の行為が、不合理な移民政策に対応するデモ隊によるものと見なされるのではないかと心配だ」と懸念を示した。別の住民も、「国家的な混乱状況の中で、黒人や白人、ラテン系、アジア系が団結すべき時に、危機を悪用する人々に怒りを感じる」と述べた。

トランプ大統領の強硬な反応

5日目に突入した大規模デモと、それに伴うロサンゼルスでの略奪など犯罪増加を受け、トランプ米大統領はデモ隊に対する攻撃的な姿勢をさらに強めた。トランプ大統領は同日、ノースカロライナ州の陸軍基地での演説で、「外国の国旗を持った暴徒がわが国を侵攻している」と主張。「ロサンゼルスは統制されていない移民のために腐敗した汚物の場所と化した」と強く非難した。

さらにトランプ大統領は、軍隊投入の可能性にも言及し、「もし私が軍隊を送っていなければ、ロサンゼルスは火の海になっていただろう」と述べた。また、「彼らは厄介者や扇動者、反乱者にお金を支払い、意図的に犯罪者が都市を占領するのを助けている」と非難を繰り返した。

当局の対応とデモの変化

治安の悪化とトランプ大統領による批判が強まる中、ロサンゼルスのデモ隊はこの日、これまで連邦建物前で行っていた集会から方針を変更し、街頭行進を経て近くの公園で平和的な集会を開催した。

エリック・ガルセッティ ロサンゼルス市長は同日、「前夜に23カ所の事業所が略奪されたことを確認した」と明らかにし、「破壊行為(バンダリズム)と略奪を防ぐため、通行禁止令を発令する」と発表した。通行禁止の対象地域は公共機関が集まる市内の約2.6平方キロメートルで、午後8時から午前6時まで外出が制限されることになった。

通行禁止令発令直後、ギャビン・ニューサム カリフォルニア州知事はテレビ演説を行い、トランプ大統領が州防衛軍を掌握しようとしているとして、「州防衛軍4000人と海兵隊700人を招集し、状況を煽っている」と批判した。そして、「カリフォルニアが最初かもしれないが、これで終わりではないだろう」と述べ、「次は他の州に拡大し、その後は民主主義そのものに対する攻撃があるだろう」と警鐘を鳴らした。

全米に広がるデモと各地の対応

実際、ニューヨークタイムズ紙によると、この日のデモはロサンゼルスだけでなく、サンフランシスコ、シカゴ、ラスベガス、オースティン、アトランタ、ニューヨークなど、全米24都市以上で同時に行われた。サンフランシスコでは数千人が集まって集会を開き、ニューヨークでもマンハッタンのトランプタワー周辺でデモ隊と警察が衝突し、少なくとも9人が逮捕された。

シカゴで不法移民対策デモに参加し、メキシコの国旗を振るデモ隊シカゴで不法移民対策デモに参加し、メキシコの国旗を振るデモ隊

こうした中、テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は、秩序維持のため州防衛軍を投入することを決定した。アボット知事はこの日、ソーシャルメディア(旧ツイッター)に「平和的なデモは合法だが、人や財産に危害を加える行為は不法であり、逮捕される対象となる」と投稿。「テキサス州防衛軍は、法執行機関が秩序を維持できるよう、あらゆる手段を動員して支援する」と明言した。

今後の見通し:さらなる拡大の可能性

トランプ大統領の誕生日である14日には、ワシントンDCで米陸軍創立250周年記念の軍事パレードが予定されており、これを機にデモがさらに拡大する可能性が指摘されている。14日には、100以上の市民団体が米国全土で「ノーキングス(トランプ大統領は王ではない)」と銘打ったデモを計画しており、数百万人の参加が見込まれている。

参考文献

  • 聯合ニュース
  • AFP
  • ニューヨークタイムズ