米韓首脳会談において共同合意文が見送られた背景には、自動車関税と対米投資を巡る両国の深刻な意見の相違があることが明らかになった。特に、韓国が主力輸出品に対する優遇関税率を求めたのに対し、米国は巨額の対米投資計画の詳細化を要求。この複雑な交渉は、トランプ政権下の「ニューノーマル(新しい基準)」としての長期化を示唆しており、日本を含むアジア諸国が同様の課題に直面している現状を浮き彫りにしている。
米韓首脳会談、合意文見送りの背景
去る25日(現地時間)に米ホワイトハウスで行われた李在明大統領とドナルド・トランプ大統領の首脳会談では、当初期待された共同合意文の発表が見送られました。この主因は、韓国側が自動車や半導体といった主要輸出品に対する15%の関税率を合意文に明記するよう求めたのに対し、米国側がこれを受け入れなかったことにあります。
米ホワイトハウスでの米韓首脳会談:李在明大統領とトランプ大統領の協議の様子
さらに米国は、この関税率の文書化の条件として、韓国が約束した3500億ドル(約51兆円)に上る対米投資の具体的な調達時期、方式、そして使用先を明文化するよう逆要求しました。韓国政府関係者は27日の電話取材に対し、「双方が共同合意文作成の過程で、自動車関税と対米投資金の具体案を巡り合意に至らなかった」と証言しています。米国は韓国が敏感に受け止めていたコメと牛肉の追加開放については韓国側の「不可能」という立場を受け入れたものの、投資金3500億ドルのうち直接投資の比重を大幅に増やし、その詳細を明記するよう強く求めたとされています。
この米国の要求は、韓国側が「投資金の大部分は融資と保証で、持ち出される可能性が低い」と考えていたこととは異なり、事実上、米国が自由に使える「白紙小切手」を入金せよという意味合いが強いものでした。韓国側は、「結果を急ぐあまり、悪い合意をすることはできない」との立場から交渉を中断し、合意文の発表は延期される形となりました。
「ニューノーマル」としての交渉長期化と米国の圧力
李在明大統領府の姜勲植(カン・フンシク)秘書室長は28日の記者懇談会で、「戦術的に(合意文を作らずに)時間を稼ぐことが悪いことではないとの内部的判断もあった」と述べ、今回の合意見送りが戦略的な選択であったことを示唆しました。同室長はさらに、「米国との交渉は終わるまで終わらない。交渉が続くことがニューノーマル(新しい基準)として定着するだろう」と発言。これは、新しい問題を絶えず提起し、交渉を難航させるトランプ政権の特性を背景とするものです。
首脳会談終了後、米国は韓国との「チキンゲーム」を継続する姿勢を明確にしました。ハワード・ラトニック商務長官は27日のCNBCインタビューで、「韓国や日本、他国からの投資資金によって国家経済安保基金が造成されるのを見ることになるだろう」と述べ、これらの資金が米国の社会基盤施設の建設に充てられるとの期待を表明しました。
日本も直面する同様の課題:高まる自動車関税の懸念
米国との最終的な交渉が韓日間の「様子見ゲーム」の様相を呈する中、日本もまた同様の難題に直面しています。28日に米国訪問を予定していた日本の赤沢亮正経済再生担当相は、突然その行程を取り消しました。当初、赤沢氏は訪米計画を発表した際、自動車関税と対米投資に関する見解の相違を埋め、合意文を協議する計画だと明らかにしていたため、このキャンセルは日本も韓国と同じ悩みを抱えていることを示唆しています。
問題は、最終合意が遅延すればするほど、韓国と日本双方の主要輸出品である自動車に対する関税負担が累積される点です。現在、米国は韓国からの自動車に25%、日本からの自動車には27.5%の関税を課している一方、欧州連合(EU)からの自動車には15%を課しており、アジア諸国はより重い負担を強いられています。この貿易摩擦の長期化は、両国の経済に深刻な影響を与える可能性があります。
結論
米韓首脳会談での共同合意文見送りは、トランプ政権の強硬な通商政策と、それに対するアジア諸国の戦略的な対応を示す象徴的な出来事となりました。自動車関税と対米投資を巡る交渉は、「ニューノーマル」として長期化する兆しを見せ、韓国だけでなく日本も同様の課題に直面しています。今後、米国との貿易交渉は複雑さを増し、関係国間の協調と戦略的な判断がこれまで以上に重要となるでしょう。
参考文献
- 中央日報 (記事提供元)
- CNBC (ハワード・ラトニック商務長官の発言引用元)