トランプ大統領、ロサンゼルス暴動鎮圧に「反乱法」発動を警告

米国のドナルド・トランプ大統領は10日(現地時間)、不法移民取り締まりへの反発に端を発したロサンゼルス(LA)でのデモ事態を鎮圧するため、「反乱法(Insurrection Act)」を発動する可能性があると警告した。これは、現場に動員されている軍部隊がデモ鎮圧作戦に投入される可能性を示唆するものだ。トランプ氏は同日、ホワイトハウスで、今回のデモ事態に対応して反乱法を発動するかとの問いに対し、「反乱行為が起きるなら当然発動する」と答えた。

フォート・ブラッグ基地で軍事デモンストレーションを視察するトランプ大統領フォート・ブラッグ基地で軍事デモンストレーションを視察するトランプ大統領

「反乱法」とは

1807年に制定された反乱法は、大統領が暴動や内乱、無政府状態といった制御不能な状況において、連邦軍や州防衛軍を動員し秩序を回復させることを許可する法律である。これは、軍隊を国内の治安維持に動員することを原則禁止する「民兵隊法(Posse Comitatus Act)」の例外規定であり、極めて異例的な状況に限定して発動されるように設計されている。直近の事例は、1992年にジョージ・H・W・ブッシュ政権が「LA暴動」の際、カリフォルニア州知事の要請を受けて暴動鎮圧のために連邦軍を投入したケースである。

BLM運動時も検討された「反乱法」

トランプ政権第1期、2020年のジョージ・フロイドさん死亡事件によって黒人への暴力停止と人種差別撤廃を訴える「BLM(Black Lives Matter)運動」が全米に拡大した際も、当時のトランプ氏は反乱法を動員して軍隊を投入する場合があると警告した。ただし、その時はマーク・エスパー国防長官ら軍首脳部の反対や深刻な政治的論争の中で、実際には発動されることはなかった。

トランプ氏の現在の主張と現場状況

トランプ氏はこの日、反乱法発動の可能性について「今後を見なければならない」としつつ、「だが申し上げられるのは、昨夜も、その前夜もひどかったということだ」と述べた。続けて、「皆さんが見たように、ハンマーを手にしたデモ隊が道路を破壊し、コンクリートの塊を警察や軍人に投げつけた」と状況を説明。さらに、「我々が介入しなかったら、今ごろLAは数カ月前(大型山火事で)すべての住宅が焼失していたように燃えていただろう。私は冗談を言っているのではない」と述べ、介入の正当性を主張した。

海兵隊投入が状況を悪化させる可能性についての懸念を問われると、「全くない」と否定。「我々は昨夜、大きな仕事をやり遂げた。多くの車両が煙と炎に包まれるひどい場面が多く出たが、今朝はとても平穏だ」と述べた。州防衛軍の駐留期間については、「危険がなくなるまでだ。簡単だ」と答えた。LAには7日に州防衛軍2000人が動員され、9日にはさらに2000人の追加派遣および海兵隊700人の派遣が決定されており、今回の事態に動員される総兵力規模は4700人に達する見込みである。

カリフォルニア州知事への批判

LAでのデモ事態に関連し、「トランプ氏が事態を意図的に助長している」として対立するカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏(民主党)については、「1日前、ニューサムに電話をしてしっかり仕事をしろと言った」と明かした。さらに、「彼は多くの死亡者と潜在的死亡者を招くなど、ひどい仕事をしている」と厳しく批判した。

今後のイベントへの警告

一方、トランプ氏は14日にワシントンD.C.で行われる米陸軍創設250周年を記念した大規模軍事パレードの過程でデモが起きた場合、「非常に強力な対応に直面するだろう」と警告した。トランプ氏の79回目の誕生日であり「フラッグ・デー(Flag Day)」でもある14日には、「エイブラムス」戦車28両やヘリコプター50機、兵士6700人などが動員される大規模な閲兵式が予定されている。同日、ワシントンD.C.を含む主要都市では、トランプ氏に反対する草の根団体の「ノーキング(No King、王はいない)集会」も計画されている。

今回のトランプ大統領の発言は、国内の治安維持における軍の役割、大統領の権限、そしてデモ・暴動への強硬姿勢を改めて示すものとなった。LAでの鎮圧対応に反乱法発動の可能性を警告すると同時に、来る軍事パレード中のデモに対しても強力な対応を予告しており、今後の動向が注視される。