フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏(70)が、自身のYouTubeチャンネル「古舘伊知郎チャンネル」を更新し、6月3日に日本テレビ系で放送された「緊急特番 ありがとう長嶋茂雄さん ミスタープロ野球 永遠に…」の内容について厳しい言葉を投げかけました。国民栄誉賞を受賞し、「ミスタープロ野球」と称された長嶋茂雄氏の訃報を受けて編成されたこの番組に対し、古舘氏は「なんで日テレはあんな緊急特番をやったんだろうっていうのが、どうも間尺に合わない」「テレビ出身としても、悲しくてしょうがないね、本当に」と、テレビ局のあり方に疑問を呈しました。
自身のYouTubeチャンネルで発言するフリーアナウンサー古舘伊知郎氏 (撮影は2023年12月)
長嶋氏の訃報に触れた古舘氏は、自身が客員教授を務める立教大学内にある「長嶋茂雄氏顕彰モニュメント」を訪れた際のエピソードを披露。手向けられた花が少なかったことや、自身が手を合わせている理由を「なんで?」と不思議がる若い学生がいたことを明かしました。この経験から「知らない若い人たちを責める気は毛頭ありませんよ。知らなくて当然じゃない。僕だって今のスーパースターを知らない可能性もあるわけですから。もう昭和が遠くなっているんです」と、世代間の認識の違いを認めました。
追悼番組の「焦点」への疑問
古舘氏は、追悼特番が放送されること自体には理解を示しつつも、「長嶋茂雄さんのどこにポイントを絞るかに関して、『ええ?』と寂しくなりました」と、番組の構成や焦点を問題視しました。現在のテレビが若年層を主なターゲットとしている点を踏まえ、長嶋氏のような昭和のスターの話題が「今のターゲットと違うっていうんだったら、普通のニュースやワイドショーで流せばいいんですよ。緊急特番その日のうちに2時間仕立てて番組を生でやる必要はないですよね」と指摘しました。
番組が主に長嶋氏の監督時代、特に「メークドラマ」に代表される読売巨人軍の指揮官としての側面に焦点を当てたことに対し、古舘氏は「やるんだったら現役時代ですよ」と主張しました。「監督時代ならかろうじて今の若い視聴者層にも理解が深まるからなんていうことはあるわけない。言い訳ですそんなの」と、その理由を「言い訳」だと一蹴しました。
「昭和」の現役時代こそ焦点を
古舘氏の考えでは、長嶋氏の功績を正しく伝え、その意義を理解してもらうためには、彼の選手としての「現役時代」に焦点を当てるべきだといいます。彼は「やるんだったら、緊急特番であろうがなかろうが、3日遅れでもなんでもいいからちゃんとした長嶋さんの特にプロ野球時代の昭和の時代とともに本当に二人三脚で、日本が歩んできたんだっていうのをやるべきじゃないですか」と提言しました。
その根拠として、日本テレビが巨人戦の放映権を持ち、「アーカイブ、ソースはいっぱいあるわけですから。日テレが一番も持ってるわけですから」と豊富な映像資料の存在を挙げました。「巨人阪神戦、あるいは関西で阪神巨人戦やったら視聴率50%の時代ですよ」と、当時のプロ野球と社会との密接な関係性や、長嶋氏がいかに時代の象徴であったかを強調しました。昭和という時代背景の中で、彼の三振の様子や、後楽園球場の夜空に月が浮かぶといった情景まで含めて伝えることで、「昭和の流れがあって今があるという時系列、時間軸でとらえるならば、監督以降を中心にやっちゃいかんわけで、もっと現役時代の…色々使ってやれば…」と、多角的にその偉大さを描くべきだと訴えました。
病後の映像多用への「残酷」という指摘
さらに古舘氏は、長嶋氏に関するテレビの報道、特にNHKを含む各局の追悼番組やニュースでの映像使用について、「テレビって残酷だなと思う」と総括しました。彼は、多くの番組が「病で倒れられてからの長嶋さんの、やや動きが、四肢が、不自由になられてから(の映像)をいっぱい使うんですよ」と指摘しました。その理由が「今に近いからっていう大義のもとに」であることに対し、「何言ってんだ!っていうの。過去があって今があって未来があるんじゃん?」と強く反論しました。
長嶋茂雄さんのご遺体を納めた棺を自宅から運び出す息子の一茂氏
輝かしい全盛期の映像があるにも関わらず、「何で今に近い方ばっかり、NHKも民放も、長嶋さんに関して出すの?」と疑問を呈しました。この傾向は長嶋氏に限らず、「同じことがみの(もんた)さんにも言える」とし、みの氏が進行性のパーキンソン病を患ってからの、歩行が困難になり痩せた姿や、声だけは張り上げている様子などの映像が多く使われたことに触れました。こうした報道姿勢に対し、対象人物の全盛期、最も輝いていた時代の姿をもっと伝えるべきだと訴え、テレビによる映像の切り取り方が故人のイメージに与える影響について問題を提起しました。
結論
古舘伊知郎氏は、日本テレビが放送した長嶋茂雄氏の追悼特番に対し、その「緊急性」や「焦点」の当て方に強い疑問を投げかけました。特に、監督時代ではなく、プロ野球が社会現象であった昭和の「現役時代」にこそ光を当てるべきだと主張しました。また、長嶋氏やみの氏など、病に倒れた後の映像を多用するテレビの傾向を「残酷」だと批判し、故人の最も輝いていた時期の映像を伝えることの重要性を訴えました。これは単なる番組批評にとどまらず、テレビというメディアが、時代の象徴であった人物のレガシーをどのように後世に伝えていくべきかという、より本質的な問いを投げかけるものと言えるでしょう。
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