アメリカとイランの核協議が停滞する中、13日、イスラエルがイランに対する直接攻撃に踏み切った。イスラエルはイランの核施設を攻撃し、イスラエル国内には特別緊急事態が宣言されたとも発表されている。
なぜ今、イスラエルはイランを攻撃したのか? 日本経済への影響はあるのか? 国際情勢ウォッチャーの武隈喜一氏に聞いた。
━━イスラエルがイランを攻撃した状況をどう見るか?
「アメリカはイランとの間で核の交渉を進めてきたがうまくいかない。それで、それに業を煮やしたネタニヤフ側が『もうこれはイランを攻撃するしかない』と決断に踏み切ったのだと思う。イスラエルは今の状況に大変危機感を持っていたから、これ以上進めればイランは確実に核を持つという恐怖心がネタニヤフ首相に実際の攻撃に踏み切らせたのだと思う」
イランの核施設への攻撃は“政権浮揚”のため?
━━とはいえ、アメリカはイスラエルに対して、イランとの協議を妨げるような行動を取らないように促していた。それを飛び越えて先制攻撃をしたのはなぜか?
「実はネタニヤフ政権とトランプ政権は今微妙な立場だった。つまり、ガザの和平も進まないことにトランプ政権は大変苛立ちを募らせていて、そのことでネタニヤフ政権が国内で非常に弱い立場に追い込まれていた。そして、それを克服するためにも、ネタニヤフ首相はイランの核施設への攻撃を自分の政権浮揚に使っている。そして、それによってアメリカとの関係をもう一度引き戻そうということも考えていると思う」
━━もし紛争が起こったら、中東にあるアメリカ軍の基地を標的にするという報道もある。今トランプ政権はどのように見ているのか?
「トランプ政権は『アメリカは全くこの攻撃には関与していない』と何度も言っている。けれども、実際、アメリカとしてはイランの核施設に攻撃があった場合、今度はイラク国内の米軍基地に対してイランが攻撃を仕掛けてくるということを何度もイランが言っていた。だから『自分たちはここでは関係ない』と、あくまでもイスラエルの単独の決定と攻撃なのだと強調したいのだと思う。ただ、イランとしては『イスラエルの決定の背後にはアメリカがいるんじゃないか』と常に匂わせていたから、アメリカが自分たちは関係ないといくら主張してもイラン側の強硬な報復はアメリカにとっても脅威になり得るだろう」