中国軍機、海自機に45メートル異常接近:空母山東からの意図的行動か

自衛隊の吉田圭秀統合幕僚長は12日の記者会見で、中国軍機の行動について「40分、80分という時間を追従し、それも2日連続で起きた。そういう行動を故意に取っていると受け止めている」と述べ、海上自衛隊のP3C哨戒機に対する異常接近が意図的であったとの認識を示しました。この異常接近は、中国海軍の空母「山東」が西太平洋に進出した際に発生しました。

事案の詳細と緊迫の距離感

防衛省が発表した中国軍機海自機への異常接近事案は、6月7日と8日の2日連続で発生しました。いずれも、中国大陸から1500キロ以上離れた沖ノ鳥島付近の西太平洋で活動していた中国海軍の空母「山東」から発艦したJ15戦闘機によるものです。

西太平洋を進む中国海軍の空母「山東」と護衛艦西太平洋を進む中国海軍の空母「山東」と護衛艦

7日には1機のJ15が約40分間、8日には別の1機に加えもう1機が約80分間、海上自衛隊のP3C哨戒機に接近・追従しました。最も接近した距離は左右とも約45メートルにまで及び、8日にはP3Cの前方約900メートルを同じ高さで横切る危険な行動も確認されています。

この45メートルという距離は、航空自衛隊のパイロットが「見知らぬ人が横に肩を並べて歩いてきたような冷や汗をかく距離感」と形容するほどです。前方を横切る行為は、後方乱気流によるエンジン異常などを引き起こす可能性があり、極めて危険です。

背景にある中国海軍の活動拡大と専門家の見解

今回の事案は、中国海軍が空母「山東」と「遼寧」を史上初めて西太平洋へ同時展開し、「第2列島線」を越えて活動範囲を拡大させていた中で発生しました。海上自衛隊のP3Cは当時、中国海軍艦隊の警戒監視任務にあたっており、無線で交信を試みていた模様です。空自関係者からは、当時の状況に対して「ここは中国の空だと言わんばかりだ」との声も聞かれました。

近年、中国軍機による外国軍機への異常接近は増加傾向にあります。2023年には米国防総省が、過去2年間で米軍機への異常接近が180件以上発生したと公表しています。搭乗員の顔が識別できるほどの距離への接近や、米軍機の前方を横切るなどの事案が含まれています。今年2月には、南シナ海でオーストラリア空軍のP8A哨戒機に対し、中国空軍のJ16戦闘機が約30メートルまで接近し、ミサイル回避用のフレアを発射する危険な行為も報告されています。

安全保障論の専門家である明海大学小谷哲男教授は、今回の異常接近は、新たな海域での活動に対する中国側の牽制であり、空母打撃群の運用に自信を深めていることの表れだと分析しています。

自衛隊制服組トップの吉田統合幕僚長が「故意」と受け止めている今回の異常接近事案は、中国軍が西太平洋における活動を活発化させ、日本の自衛隊を含む他国軍への圧力を強めている現状を浮き彫りにしています。今後も中国海軍の空母打撃群の動向と、それに伴う周辺空域・海域での中国軍機の行動が、地域の安全保障環境に与える影響が注視されます。

参考資料