作家の竹田恒泰氏は10日、衆院法務委員会に参考人として出席し、選択的夫婦別姓制度の導入について改めて否定的な見解を表明した。参政党の吉川里奈氏の質問に対し、竹田氏は「日本の1億2千万人が家族としての一体感をどんどん失っていく。払うべき代償があまりにも大きい」と述べ、制度が社会に与える影響に強い懸念を示した。日本の家族制度の根幹に関わるこの問題は、近年、国会でも度々議論されている。
衆院法務委員会で選択的夫婦別姓に否定的な意見を述べる竹田恒泰氏 (撮影日: 6月10日)
家族一体感と社会への影響
竹田氏は、選択的夫婦別姓が実現すれば「従来の家という概念はなくなっていく」「日本の1億2千万人が家族としての一体感をどんどん失っていく」と主張した。その例として、学校名を冠しないチームが甲子園に出場することの難しさに触れ、「学校としての一体感や、背負うものはない」と述べ、名称が象徴する帰属意識や連帯感の重要性を強調した。また、推進派が「名前にこだわっているからこそ選択的夫婦別姓なのだろう」としながらも、制度導入が進めば最終的に「家の名前がなくなっていくという問題がある」と指摘。家族制度の大きな変更には予測できない部分が多く、本当に困っている層には小幅な修正で対応しつつ、基幹となる制度は極力維持すべきだとの考えを示した。
皇室制度への懸念
吉川氏は、わが国の皇室制度が長く家を単位とした継承を重んじてきたことに触れ、戸籍制度や婚姻制度の根幹変更が皇室の継承や安定性に影響を及ぼす可能性について竹田氏の見解を求めた。これに対し竹田氏は、選択的夫婦別姓賛成派には女性天皇や女系天皇を主張する者が多いと述べた上で、皇室に選択的夫婦別姓やLGBTといった考え方が持ち込まれた場合の混乱に言及した。具体例として、皇室で選択的夫婦別姓が選択された場合や、内面が男性であると認識する女性皇族が現れた場合の皇位継承権の問題などを挙げ、制度変更が皇室にもたらす複雑な影響への懸念を示唆した。
制度変更の費用対効果
竹田氏は、推進派が主張する「現行制度下の不便さ」や「改姓によるアイデンティティーの喪失」については、旧姓の通称使用拡大や法制化で対応可能であるとした。その上で、選択的夫婦別姓が「選択なのだから自由にさせればいい、私は関係ない」といった見方がある一方で、制度変更は社会全体に大きな影響を及ぼす構造的な変更であると強調。法改正自体のコストに加え、システム改修や民間事業所における管理体制の変更など、「とてつもない費用」と「社会的な負担」が発生すると指摘し、これらのコストをかけてまで実現する必要があるほどの利益が得られるのか疑問を呈した。
結論
竹田氏は、衆院法務委員会での議論を通し、選択的夫婦別姓制度の導入が家族一体感の喪失や社会基盤への多大なコストをもたらす可能性を強調した。また、皇室制度への影響にも懸念を示し、安易な制度変更ではなく、既存制度の枠内での小幅な対応を優先すべきとの立場を改めて明確にした。家族のあり方に関する議論は今後も続くとみられる。
参考資料
- 衆議院インターネット審議中継 (2024年6月10日 法務委員会)