2022年6月29日、大分県別府市で発生したひき逃げ事件では、停車中のバイクに乗っていた19歳の男子大学生2人のうち1人が死亡、1人が負傷しました。大分県警は、追突した軽自動車の運転手、八田與一容疑者（当時25歳）について、殺意を持って追突したとして殺人・殺人未遂容疑で逮捕状を取り、捜査を続けています。八田容疑者は、SNSで「日本一有名な指名手配犯」として拡散されたものの、事件からまもなく3年となる今も逃亡中です。この記事では、親友を亡くし自身も負傷した生存者の大学生、井上さん（仮名）の証言を通じて、事件の記憶と、亡き友との夢を胸に歩む現在の彼を描きます。
別府ひき逃げ殺人事件で指名手配中の八田與一容疑者
迫るヘッドライト：生存者の記憶
古くから日本の代表的な温泉地として知られる大分県別府市。湯煙が立ち上るこの街で、私は事件からまもなく3年となる今、八田容疑者が最後に目撃された海岸近くで、亡くなった男子大学生Aさん（当時19歳）の親友であり、事件の生存者である井上さん（仮名）に話を聞きました。すぐ隣にいた親友を失ったあの日からの記憶をたどり、懸命に言葉を発する彼の姿からは、3年間抱えてきた深い苦悩がにじみ出ていました。彼が語ったのは、バイクにまたがり、隣に並ぶ友人の横顔と、みるみる間に迫ってきた車のヘッドライトの光景。「友人の目が一瞬こちらを見たのと同時に、体に強い衝撃を感じた」と、彼は一言一言かみしめるように語りました。
悲劇の瞬間：時速100キロの追突
当時20歳だった井上さんと19歳の親友Aさんが事件に巻き込まれたのは、ショッピングモールからの帰り道でした。日が暮れ、午後8時前、赤信号の交差点で2人が乗ったバイクが横に並んで停車していた時、彼らは後ろから不審な音を聞いたといいます。「アクセルをべた踏みして、ボーンと回転数が上がっていく、F1とかで聞くような音が、すぐ後ろから聞こえてきました」と井上さんは語ります。バイクのミラーに写る車のヘッドライトの光は、見る見るうちに大きくなりました。「多分Aは気づいていなかった。バッと彼を見たら『うん?』という表情で僕の方を見ました。逃げろと言おうとして…気がついたら地面に倒れていました」。付近の防犯カメラには、2台のバイクが火花を散らしながら勢いよく吹き飛ばされる衝撃的な様子が記録されています。捜査関係者によると、追突した車は時速100キロ近いスピードで2人をはね、Aさんを引きずり電柱に突っ込んだとみられ、現場にブレーキ痕はありませんでした。
事件から3年近く、八田容疑者の逃亡は続いています。殺意があったとされる殺人容疑での逮捕状が出ており、事件の解決が待たれます。一方、深い傷を負った井上さんは、計り知れない苦悩を抱えながらも、亡き友人Aさんと抱いた「経営者になる」という夢を胸に、前を向いて歩み始めています。
出典: FNNプライムオンライン (Yahoo!ニュースより)
