2025年の開催が迫る大阪・関西万博を巡り、運営収支の「黒字」発表と、閉幕後のユニフォーム回収方法に関する二つの問題が浮上し、各方面で議論を呼んでいます。大阪府の吉村洋文知事は、運営収支が230億〜280億円の黒字になる見込みであると発表し、これを「大きな成果」と強調しました。しかし、この発表には早くも疑問の声が上がり、さらに、万博関係者の間で物議を醸したユニフォーム回収方法についても、知事が異を唱える事態となっています。
2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」像が万博記念公園に移設される様子。万博の象徴として、その動向は広く注目されている。
万博運営収支「黒字」発表への波紋
吉村知事の「黒字」発言に対し、実業家の三崎優太氏(通称:青汁王子)はX(旧Twitter)で、「運営費だけで黒字って、どんな計算してるの?建設費を含めないとか都合良すぎでしょ。それを黒字と呼ぶのはそれこそ粉飾なんじゃないの?」と疑問を呈しました。建設費を計上しない収支報告の正当性に対し、多くのユーザーから共感の声が上がっています。
一方で、大阪・関西万博に深く関心を持つ「万博マニア」の二神敦さんは、過去の国内博覧会の収支表を分析し、「地方自治体が主催する博覧会では、建設費を含めないのが一般的」と指摘します。彼は、建設費を考慮しない形での黒字強調には疑問を感じつつも、それがこれまでの万博における収支公表のスタンダードであるならば、一つの目安として受け止めるべきだという見解を示しました。万博側が意図的に情報を操作しているわけではない、というのが彼の分析です。この慣例が、今回の「黒字」発表に対する誤解や批判の一因となっている側面も指摘できます。
「制服切り裂き返却」指示が引き起こした物議
もう一つの論争は、閉幕間近の大阪ヘルスケアパビリオンで、アテンダントに対しユニフォームの「回収時にはさみなどで切った上で返却するよう指示」があったと報じられたことです。この指示は、ユニフォームの転売防止を目的としたものと見られていましたが、参加者の間で「思い出を踏みにじる行為」として強い反発を招きました。
二神さんは、この方針に対し、「非常に残念。制服を眺めて当時の思い出を振り返り、その後の生きがいにつなげることが、万博のテーマ『いのち輝く』に沿ったウェルビーイングにつながる」と批判的な見解を述べました。一部の転売対策のために、多くの参加者の大切な記憶を奪うやり方には疑問が残るとし、精神的価値の軽視を懸念しました。
この問題に対し、吉村知事もXで言及。「もともと貸与品で転売防止やリサイクルの観点から回収は必要だと思うが、このやり方はおかしいと思う。事実関係含めて確認します。ユニホームにはたくさんの思い出も詰まっている」と、パビリオン側の対応に疑問を呈しました。知事のコメントを受け、大阪ヘルスケアパビリオンは即座に対応。「アテンダントの心情に想いが至っていなかったと反省し、本日以降の回収については、はさみを入れることを取りやめることとしております」と発表し、制服の切り裂き返却方針を撤回しました。これにより、参加者の思い出と感情への配慮が示され、問題は一旦収束に向かいました。
結論
大阪・関西万博は、開催に向けて準備が進む中で、その財政運営と、参加者への配慮という二つの側面で大きな注目を集めました。運営収支の「黒字」発表は、建設費の扱いを巡る会計慣行と一般の認識との間に乖離があることを露呈させ、今後も透明性の高い情報開示が求められるでしょう。また、ユニフォームの切り裂き回収指示と、それに対する迅速な撤回は、イベント運営における参加者の感情や経験の尊重がいかに重要であるかを浮き彫りにしました。これらの出来事は、万博が単なる経済活動に留まらず、社会的な価値や人々の記憶に深く関わるイベントであることを改めて示唆しています。