人はなぜ結婚するのだろうか。経済的な安定、世間体、子孫繁栄など、その理由は時代や個人の状況によって様々である。しかし、古今東西変わらない最も根源的な理由は、おそらく「好きな人と一緒にいたい」という、シンプルかつ強い願いであろう。フジテレビ系で放送中のドラマ「波うららかに、めおと日和」第8話「一番近くであなたを見ていたい」は、この結婚の核心に迫る物語を描き出した。
夫婦として初めての正月を迎えた後、瀧昌(本田響矢)が出立して約1カ月が経過した。夫が不在の間、妻として何ができるかを模索するなつ美(芳根京子)の姿に、義母の郁子(和久井映見)は若かりし頃の自分を重ねる。新妻だった郁子は、夫・邦光(小木茂光)のために苦手な家事を懸命にこなそうとしていた。そんな郁子に邦光がかけた言葉は、「君にお世話してほしくて結婚したわけじゃない。好きなことをして楽しんでる姿を一番近くで見ていたいんだ」というものだった。
子供の頃から裁縫が好きだったと語るなつ美の話に、多くを語らずとも愛おしげに耳を傾ける瀧昌も、きっと邦光と同じ思いなのだろう。だからこそ、なつ美の針仕事について褒めてくれた後輩に対し、誇らしさと嬉しさから思わず大盤振る舞いをしてしまう。その深い愛情は、義父である篤三(高橋努)にも確かに伝わり、瀧昌は篤三から「息子」として認められるに至った。また、深見(小関裕太)への想いを抱えていた芙美子(山本舞香)と、なつ美への10年越しの片思いを続けていた瀬田(小宮璃央)も、瀧昌となつ美の夫婦の絆の強さを目の当たりにし、それぞれ自身の恋に一つの区切りをつけることができたようだ。
「波うららかに、めおと日和」第8話より:主演の芳根京子と本田響矢
一方、瀧昌の艦内見学に訪れたなつ美は、夫の身の回りの世話をする従兵の市原(岩男海史)から感謝の言葉を告げられる機会を得た。これまでの瀧昌は仕事一筋で、自分にも他人にも厳しい人物だったが、なつ美と結婚してからはすっかり丸くなった、と市原は語る。両親を亡くし、守るべき「家」を失った瀧昌は、代わりに国を守る仕事に没頭することで、自身の孤独から目を逸らそうとしていたのかもしれない。
しかし、今は他に守りたいものができた。それは、なつ美と食卓を囲み、隣に並んで眠りにつき、他愛もない会話を交わす、ごく平凡で穏やかな日々の営みである。ただそれだけのことが、瀧昌の心を深く満たしている。この心の充足こそが、彼を周囲の人々にも優しくさせる原動力となっているのだろう。結婚は、単なる制度や契約ではない。それは、互いを最も近くで見つめ合い、それぞれの「好きなこと」や「楽しい姿」を共有し、共に穏やかな日常を築き上げていく過程なのである。瀧昌となつ美の夫婦関係を通して、改めて結婚がもたらす人生の豊かな変化が描かれた第8話であった。
「波うららかに、めおと日和」より:見つめ合う芙美子(山本舞香)と深見(小関裕太)
このエピソードは、結婚が個人の内面にどのような変化をもたらし、他者との関係性にどう影響するのかを深く掘り下げている。瀧昌が「守るべきもの」を見つけたことで見せた変化は、結婚が孤独を埋めるだけでなく、人生に新たな光と意味を与え得ることを示唆している。なつ美と瀧昌がこれからどのような夫婦の形を育んでいくのか、今後の展開が注目される。