岩屋外相、トルコ人ビザ免除停止を改めて否定:クルド人難民申請問題巡り

岩屋毅外相は12日の参院外交防衛委員会で、埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人らが難民認定申請を繰り返している問題を巡り、自民党の河野太郎元外相らが求めているトルコ国籍者の短期滞在の査証(ビザ)免除停止について、改めて否定する考えを示しました。これは、日本維新の会の柳ケ瀬裕文氏からの質問に対する答弁です。柳ケ瀬氏は、岩屋外相の判断が法務省が推進する「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に反すると批判し、「不法滞在ゼロを全然やる気がない」と述べました。本委員会での議論は、日本における外国人政策、特に難民申請と在留資格に関する重要な論点となっています。

参院外交防衛委員会で答弁する岩屋毅外相(トルコ人ビザ免除問題)参院外交防衛委員会で答弁する岩屋毅外相(トルコ人ビザ免除問題)

柳ケ瀬氏が指摘する「スキーム」とビザ免除停止の必要性

柳ケ瀬氏は、クルド人が日本に定着する際の典型的なパターンとして、「観光目的でビザなしで入国し、難民申請を行い、その後就労するというスキーム」があることを指摘しました。この一連の流れにおいて、最初のステップであるビザ免除措置を停止することが、日本国内に入国するクルド人の数を抑制する上で最も有効な手段であると主張しました。同氏は、このビザ免除停止こそが、法務省が掲げる「不法滞在者ゼロプラン」の達成に大きく貢献する政策であるにも関わらず、岩屋外相が一貫して実行しない姿勢を示していることは、「違法滞在外国人ゼロ」という目標に反していると厳しく批判しました。

岩屋外相、経済活動への影響を懸念し停止を否定

これに対し、岩屋外相はビザ免除措置の停止が経済活動や人的交流に与える悪影響を懸念し、改めて停止の必要性を否定しました。外相は、「停止すれば企業の経済活動の停滞、人的交流の減少など、さまざまなマイナスの影響を及ぼすことは避けられない」と述べ、現在の状況はトルコに対する査証免除措置を直ちに停止するほどではないとの認識を示しました。これは、不法滞在対策と国際的な経済・人的交流促進とのバランスを重視する姿勢と言えます。

イランの事例から見るビザ免除停止の効果

柳ケ瀬氏は、過去の事例として1990年代のイラン人の違法滞在問題を挙げ、岩屋外相に方針転換を迫りました。当時、イラン人の違法滞在が深刻な懸念となった際に、イランへのビザ免除措置が停止され、同時に違法滞在の取り締まりが強化された結果、日本に違法滞在するイラン人は激減し、問題が鎮静化したという経緯を説明しました。この事例を根拠に、柳ケ瀬氏はビザ免除の停止が違法滞在外国人の削減に寄与することは明らかであると強調しました。

さらに、柳ケ瀬氏は、河野太郎氏が出入国在留管理庁から外務省に対し、何度もビザ免除停止の要求が出ていると発信していることに触れ、神田潤一法務政務官に対し、外務省への働きかけの内容を尋ねました。神田政務官は具体的な内容への言及を避けつつも、「これまでも外務省とさまざまな情報や意見の交換をしている。今後もしっかり外務省と連携して取り組んでいきたい」と述べるにとどまりました。柳ケ瀬氏は、この答弁を外務省への働きかけがあったものと受け止め、「はっきりと言えばいい。外務省に対して『なぜやらないのか』と言ってきたと思う」と発言しました。

柳ケ瀬氏の最終的な批判:政府の不法滞在対策への疑問

これらの議論を踏まえ、柳ケ瀬氏はビザ免除停止措置を「今すぐやるべきだ」と強く主張しました。同氏は、自民党内からもビザ免除停止を求める大きな声が上がっていることに言及し、特に川口市の地元議員が「悲鳴を上げ」、住民が「非常に困難な状況にある」ことを岩屋外相が理解していないと批判しました。イランの事例で効果が実証されているにも関わらず、トルコに対して同じ措置を取らない岩屋外相の姿勢に対し、柳ケ瀬氏は、「岩屋氏の答弁を聞いていると、自民党は選挙前だから不法滞在外国人ゼロをぶち上げたが、実際にやる気が全くないのではないかと思う」と述べ、政府の不法滞在対策への疑問を呈して委員会での質疑を締めくくりました。

埼玉県川口市におけるクルド人問題を訴える地域住民の画像(人権に関する懸念)埼玉県川口市におけるクルド人問題を訴える地域住民の画像(人権に関する懸念)

結論

今回の参院外交防衛委員会での議論は、トルコ国籍者へのビザ免除措置の継続を巡り、岩屋外相が経済的影響を理由に停止を否定する一方、日本維新の会の柳ケ瀬氏が不法滞在対策の有効性と過去の事例(イラン)を根拠に強く停止を求めるという構図が浮き彫りとなりました。法務省と外務省間の連携のあり方も問われる中、川口市におけるクルド人コミュニティを巡る問題が政治的な議論の焦点となり続けています。政府が掲げる「不法滞在者ゼロプラン」の実行性や、人道的な配慮と国内の治安・秩序維持との間で、今後どのような政策判断が下されるのかが注目されます。

参照元

https://news.yahoo.co.jp/articles/ff4a9ee0a0681a254598d44c144214efa88f9178