財務省の絶大なる権力、その源泉とは?予算編成権が霞が関・永田町を支配する構造

今年の「財務省解体デモ」に見られた国民の減税・財政出動への声。財政均衡を掲げる財務省にこの声は届くのでしょうか。政治家やマスコミさえも恐れさせると言われる財務省の絶大なる権力は、一体どこから来ているのでしょうか。元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏の著書『財務省 バカの「壁」 最強の“増税マシーン”の闇を暴く』を基に、その力の根源を探ります。

財務省が「最強官庁」と呼ばれる理由

「最強官庁」と恐れられる財務省は、霞が関の各省庁はもちろん、永田町の政治家までも支配していると評されます。かつて「民業圧迫」と批判された約400兆円規模の「財政投融資」の全額を、当時の大蔵省の一部局だった「資金運用部」が一手に預託していた例からも、その力の大きさがうかがえます。この原資は郵便貯金でしたが、運用は郵政省ではなく長らく大蔵省の管轄でした。こうした具体的な事例は、財務省の権力の根幹がどこにあるのかを問いかけます。では、他の省庁や政治家をも凌駕するその力の源泉はどこにあるのでしょうか。財務省がこれほど強い支配力を持てる理由は、主に次の3つの特別な権限にあると指摘されています。

予算編成権など絶大な権力を持つ財務省の庁舎(時事通信フォト)予算編成権など絶大な権力を持つ財務省の庁舎(時事通信フォト)

予算編成権:霞が関・永田町を支配する核心

財務省が持つ3つの権限のうち、最も強大な力を持つとされるのが【1】予算編成権です。これは、国の予算配分を最終的に決定する権限を財務省が握っていることを意味します。この権限があるからこそ、政治家や各省庁は財務省に頭が上がらない状況が生まれます。政治家が地元のため、あるいは支持層である業界や団体のために補助金などを付けたいと考えた場合、すべて財務省への陳情が必要となります。元財務官僚である高橋氏自身も、予算編成期には分刻みでやってくる陳情議員の対応に追われたといいます。

また、各省庁にとっても、自ら提出した「概算要求」を財務省が査定し、予算案の第一次案が作成されるため、希望通りの予算を獲得するためには財務省の意向を無視できません。事実上、国家財政という「サイフのヒモ」を財務省が一手に握っている状態であり、これが霞が関全体に対する強力な支配力となっているのです。

税務調査権と人的ネットワーク

予算編成権に加え、財務省は【2】税務調査権と【3】官邸内に張り巡らされた人的ネットワークも権力の源泉としています。税務調査権は、企業や個人に対する税務調査を通じて情報を把握し、影響力を行使しうる可能性を秘めています。さらに、財務省は優秀な官僚を内閣官房などの官邸中枢に送り込み、重要な政策決定過程で影響力を保持する人的ネットワークを築いています。これらの権限とネットワークが複合的に作用し、「最強官庁」としての財務省の地位を確固たるものにしています。

結論

財務省の絶大なる権力は、予算編成権を中核とし、税務調査権や強固な人的ネットワークによって支えられています。特に予算編成権は、政治家や他の省庁を事実上支配下に置く究極のツールであり、これが財務省を日本の政治・行政において無視できない存在たらしめているのです。

参考文献
高橋洋一氏著『財務省 バカの「壁」 最強の“増税マシーン”の闇を暴く』より抜粋・再構成