米戦略爆撃機B52H、最新鋭機を凌駕する中国軍の最大の脅威に

中国軍内部で行われたウォーゲームの結果、冷戦時代から運用されてきた米国の戦略爆撃機B52Hが、米中衝突において最新鋭のステルス戦闘機F35やステルス爆撃機B2よりも大きな脅威と見なされていることが明らかになりました。この老兵がなぜ中国軍にとって最大の脅威となり得るのか、その能力と戦略的背景を探ります。

B52Hの脅威:巡航ミサイルと長距離攻撃能力

B52Hは、最大射程2400キロメートルのAGM86B空中発射巡航ミサイル(ALCM)を1機あたり20発搭載可能です。このミサイルは戦術核の搭載も可能であり、低高度を巡航するためレーダーでの捕捉が困難とされています。中国軍の分析では、戦争初期段階でこれらのミサイルが中国の防空網を突破し、中国の艦隊、戦争指揮部、核ミサイル発射施設、防空レーダー網などに壊滅的な打撃を与える可能性があり、戦況を一気に傾けかねないとの判断が示されています。

米戦略爆撃機B52Hと戦闘機の編隊飛行を示すイラスト米戦略爆撃機B52Hと戦闘機の編隊飛行を示すイラスト

最近の配備と演習

米国は、戦略的に重要なインド洋のディエゴガルシア島米軍基地に、今年5月、4機のB52Hを配備しました。また、昨年3月には2機のB52Hが日本の航空自衛隊と東海および東シナ海上空で共同訓練を実施しています。さらに、オーストラリア北部への配備も検討されているとの情報もあり、地域におけるB52Hのプレゼンスが高まっています。

中国軍のウォーゲーム分析

この分析は、中国国有の軍需企業が発行する隔月刊の学術誌「現代防御技術」の5月15日号に掲載されたウォーゲームの結果に基づくものです。香港紙「サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)」などがこの内容を報じました。SCMPによると、このウォーゲームは武漢にある空軍早期警報学院の研究チームが中国軍と共同で実施したもので、米空軍のF35AやB52Hなどが中国軍の目標をミサイルで攻撃した場合、中国の防空網にとってどれほどの脅威となるかを検証したといいます。

戦術核搭載能力とB52Hの優位性

研究チームは、特に戦術核爆弾B61-12を1機あたり4発搭載可能なB52を最大の脅威として挙げました。B52Hは古い機体ながら、内部の航法装置やデータ通信、レーダー、電子戦装備などは最新のものに換装されています。研究チームは、B52Hが空中早期警戒管制機などの支援のもと戦術核兵器を投下した場合、その爆風や放射能汚染により中国の中心的な軍事施設が一挙に無力化される危険性があると評価しました。戦術核搭載が可能なF35やB2爆撃機なども同様に脅威要因と分類されましたが、32トンに及ぶ圧倒的な武装搭載量、戦術核兵器の搭載数、そして1万4000キロメートルに及ぶ長い航続距離を考慮すると、B52Hが最も深刻な脅威であると分析されました。戦術核攻撃と通常兵器攻撃で脅威順位を分けて評価した結果、核攻撃時にはB52Hが最大の脅威となり、次いでB2、F35の順になると結論付けられています。

米国の核武装能力復活の動き

研究チームはまた、米議会が昨年、運用中のB52Hのうち30機の核武装能力復活を進めた点にも言及しています。米国はロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)に基づき、2015年以降、76機のB52のうち30機の核武装能力を除去していましたが、これを元に戻す動きです。これは、台湾海峡を巡る米中衝突が発生した場合、戦術核兵器の使用も排除しないという米国の意志を示すものと解釈されています。

中国軍の内部ウォーゲーム分析は、米国の老朽化した戦略爆撃機B52Hが、その巡航ミサイル搭載能力と潜在的な戦術核攻撃能力により、最新鋭機をも上回る最大の脅威となり得るという驚くべき結論を示しました。これは、核武装能力の復活や地域への配備を進める米国の戦略と相まって、米中間の緊張関係におけるB52Hの新たな、そして重要な役割を浮き彫りにしています。

Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/add6afe2604293ad867726b22c39c47ac196face