太陽光パネル大量廃棄時代迫る、リサイクル法整備足踏みの背景

2030年代に到来が見込まれる太陽光パネルの大量廃棄時代に向け、リサイクルのための法整備が遅れている。政府は今国会での関連法案提出を見送ったが、その背景には費用負担の公平性を巡る根本的な課題が存在する。パネル廃棄量の増加が年々進む中、法整備の遅れは有害物質を含むパネルの不適切な埋め立て処分につながりかねず、関係者の間で早期の制度確立が求められている。

法案提出見送りの核心:費用負担の公平性問題

今国会で見送られた法案は、太陽光パネルの解体費用を所有者が、リサイクル費用をメーカーが負担するという仕組みを想定していた。特に、既に設置されているパネルについては、法施行後に新規でパネルを製造するメーカーなどがリサイクル費用を負担するという内容だった。これに対し、内閣法制局は自動車リサイクル法など他の関連法における費用負担が所有者中心であることとの整合性が取れないと指摘した。

この法案は、メーカーが「作りっぱなし」にせず、リサイクルまで責任を負う「拡大生産者責任」の考え方に基づいて設計されていたが、出だしからつまずいた形だ。現在、リサイクル費用を誰が負担すべきかについて、より丁寧な説明と合意形成に向けた検討が進められている。自民党の環境・温暖化対策調査会などは、リサイクル促進制度の法案提出目標を今秋とする決議を石破茂首相に提出しており、仕切り直しが図られている。

急拡大の代償:増え続ける廃棄物と潜在的な環境リスク

東京電力福島第1原発事故後の2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を機に、太陽光パネルは全国的に急速に普及した。総発電量に占める太陽光の割合は、2011年度の0.4%から2023年度には9.8%にまで増加している。しかし、導入当初から廃棄後のリサイクル体制まで十分に考慮されておらず、現在、寿命を迎えて廃棄されるパネルは廃棄物処理法に基づき、主に埋め立て処分されているのが実態だ。

大量廃棄が懸念される住宅用太陽光パネル大量廃棄が懸念される住宅用太陽光パネル

太陽光パネルの中には、発電効率を高めるためにヒ素やアンチモンといった人体に有害な物質が含まれているものもある。これらのパネルが地下水脈近くに埋め立てられた場合、有害物質が漏出し、周辺住民の健康被害につながる懸念が指摘されている。環境省の試算によると、廃棄されるパネルは2030年代後半から目立って増加し始め、2040年代には年間最大で50万トン近くに達する見通しだ。これは2021年度に処分された産業廃棄物全体の約5%に相当する量となる。

普及拡大を偏重し、廃棄問題を軽視してきたことによる「ツケ」が、いよいよ顕在化しつつある状況だ。環境負荷低減の観点からも、使用済み太陽光パネルを適切にリサイクルできる体制を早期に整備することが喫緊の課題となっている。

まとめ

太陽光パネルの大量廃棄時代が目前に迫る中、そのリサイクルを義務付ける法案の整備は費用負担の公平性を巡る課題から遅れている。FIT制度による普及急拡大の陰で、廃棄されたパネルに含まれる有害物質による環境汚染リスクや、将来的な廃棄量の膨大化という問題が現実味を帯びてきた。普及促進と廃棄・リサイクルのバランスを取り、持続可能なエネルギーシステムを構築するためには、関係者間の協力のもと、早期に実効性のある法制度を確立することが不可欠である。

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