【「謝罪会見」翌日に“公認見送り”は国民民主の大失態…ハシゴをはずされた「山尾志桜里氏」が“不倫質問”に耐え続けた2時間半は何だったのか?】からの続きである。元衆議院議員の山尾志桜里氏が、自身の参議院選挙における公認内定を取り消した国民民主党に対し、訴訟を提起すべきだとの意見がインターネット上で散見されている。政治と法律の専門家の見解はどうなのか。
玉木代表による出馬要請と国民民主党の「手の平返し」
山尾氏が2024年6月12日に発表した文書「両院議員総会での公認取消決定について」によると、そもそも山尾氏に参議院選挙への出馬を要請したのは、国民民主党の玉木雄一郎代表であったと記されている。担当記者によれば、山尾氏と玉木氏は2009年8月の衆議院議員選挙で共に初当選した「同期議員」であり、両氏とも旧国民民主党に所属していた時期があるなど、政治家として親交が深かったという。玉木代表は、いわば三顧の礼を尽くす形で山尾氏に出馬を打診したとされる。
ところが、インターネット上で山尾氏に対する過去の問題に関する批判が集中すると、国民民主党側、特に玉木代表の態度が変化したことが、山尾氏の文書には詳しく述べられている。そして、山尾氏が6月10日に2時間半に及ぶ会見を終えた翌日、6月11日に国民民主党は山尾氏の「公認内定」を取り消す決定を行った。
この一連の騒動で、山尾氏が被った精神的苦痛は相当なものであるとの見方がある。そのため、国民民主党に対して慰謝料などを請求する訴訟を起こすことが可能である、という意見がネット上で広がっている背景となっている。
若かりし頃、「美魔女」候補として注目された山尾志桜里氏のポートレート
元検事・元衆議院議員である弁護士・若狭勝氏の見解
検察官および衆議院議員の経験を持ち、現在は弁護士として活動する若狭勝氏は、山尾氏が国民民主党に対して訴訟を提起すること自体は可能であるとの見解を示している。裁判所が山尾氏の訴えに対し、一定の理解を示す場面もあるだろうと述べる。しかし、若狭氏は「ただし、もし本当に提訴に踏み切れば『労多くして功少なし』という結果になると思います」と指摘する。
若狭氏によれば、山尾氏側が入念な訴訟準備を行い、法廷で丁寧な立証や主張を行えば、勝訴に至る可能性もゼロではないという。しかし、名誉が一気に回復するような高額の慰謝料が認められる可能性は低いと見ている。仮に勝訴できたとしても、それは「いわゆる“辛勝”というレベル」に留まる可能性が高いとしている。
訴訟が厳しい結果に終わる可能性が高い理由として、若狭氏はいくつかの点を挙げる。まず、大学生が企業から内定を取り消されたケースとは異なり、山尾氏は参議院選挙に出馬しようとしていた「政治家になろうという人間」であるという点だ。出馬会見のような場では高い水準の説明責任が求められるため、記者とのやり取りで精神的苦痛が認められにくい可能性がある。また、国民民主党が「公認内定」を取り消したことについても、政治家を目指す者であればある程度は我慢すべき政治的な出来事であると裁判所が判断する可能性も考慮すべきだと述べる。
山尾志桜里氏が公認取消騒動の背景となった出馬・謝罪会見に臨む様子
「公認」と「公認内定」の違いが争点に
山尾氏は自身の文書の中で、《党から正式な公認内定を受けても、党の都合で排除されてしまう政党では、志ある方も今後立候補の決断に躊躇してしまうのではないでしょうか》と問題提起を行っている。ここで若狭氏が特に注目するのは「公認内定」という言葉が使われている点だ。
若狭氏は、これは正式な「公認」ではなく、「公認内定」であった可能性があると指摘する。正式な「公認」を取り消された場合と、「公認内定」を取り消された場合とでは、裁判所の評価が変わる可能性があるという。もし裁判所が、山尾氏が取り消されたのは正式な「公認」ではなく、あくまで「公認内定」であったと認定した場合、たとえ山尾氏が勝訴したとしても、認められる慰謝料の額は低く抑えられる可能性があるとのことだ。
いずれにしても、山尾氏と国民民主党が法廷で激しく争うような事態になれば、山尾氏自身のイメージが悪化することはあっても、良くなることはないだろうと若狭氏は予想する。これが、裁判を起こしても「労多くして功少なし」という結果に終わると予想する最大の理由であると、若狭氏は締めくくっている。
まとめ
元衆議院議員の山尾志桜里氏が国民民主党から参議院選挙の「公認内定」を取り消された問題を巡り、ネット上では党への訴訟の可能性が議論されている。弁護士であり元政治家でもある若狭勝氏は、法的に訴訟提起は可能であるとしながらも、その結果は「労多くして功少なし」、つまり多くの労力を費やしても得られるものは少ない「辛勝」に終わる可能性が高いとの見解を示した。その理由として、政治家への高い説明責任、政治判断への司法の介入の限界、そして「公認」と「公認内定」の法的重みの違いなどを挙げている。加えて、裁判によるイメージ悪化のリスクも指摘されており、たとえ勝訴したとしても、政治家としての復権や名誉回復に繋がる可能性は低いという厳しい見通しが示された形だ。