ウーバーイーツの配達員として働く日々は、お客様からの「ありがとう」にやりがいを感じる一方で、心ない言葉を浴びせられ、劣等感を抱きがちです。筆者自身も、不当解雇の経験から自信を失い、社会的な評価の低さに傷つく一人でした。しかし、そんな彼が劣等感を乗り越え、再び自分に自信を取り戻すきっかけとなった「魔法の7文字」があったのです。それは、日々の業務で接する飲食店の人々からかけられた、ある意外な言葉でした。彼の心を救い、「働く楽しさ」を再認識させたその言葉とは、一体何だったのでしょうか。
「ありがとう」が溢れる現場:心温まる交流の瞬間
ウーバーイーツの配達現場では、多くの温かい交流が生まれます。例えば、サーティーワンのホールケーキをお届けした際、幼稚園くらいの女の子から「やったー!お兄ちゃん、ありがとう!」と全身で感謝された時は、心がホッコリと温かくなりました。また、芦屋にある飲食店のオーナーからは「今日は暑いから大変だろ。ほら、これでも飲んでけ」と、冷たいコカ・コーラを差し出されたこともあります。その時の感謝の気持ちは、「ありがとうございます!」という言葉を10回くらい伝えても足りないほどでした。
配達中にスマホやクレジットカード、定期券などの落とし物を拾い、複数回にわたって交番に届けた際には、警察官から「ありがとね」と感謝されました。その交番の前を通るたびに「お疲れ!」と挨拶されるようになった今では、交通違反をしていないかと少しだけビクビクすることもありますが、人の役に立てた喜びを感じます。29歳でウーバーイーツの仕事を始めた筆者が34歳になった今も続けているのは、このように直接肌で「ありがとう」を感じられる環境に大きな魅力を感じているからです。ウーバーイーツの配達現場は、感謝の言葉で溢れています。
心ない言葉に傷つく配達員:社会評価の現実
しかしその一方で、ウーバーイーツ配達員を見下したり、バカにしたりする人も存在します。先日、筆者は小学生の集団とすれ違った際、「げ、あそこにウーバーいるぞ」「どこどこ、うわっ、本当にいる」「暑いのに大変そぉ」などと、まるで珍しい動物でも見るかのような言葉を耳にしました。これらの言葉は、あまり気持ちの良いものではありませんでした。
他にも、駅前の歩道をウーバーイーツのバッグを背負って歩いていた時のことです。「やべっ!」という声と共に、背中に衝撃が走りました。振り返ると、自転車に乗った男子高校生2人が立っており、スマホに夢中で筆者の存在に気づかずに衝突したようでした。幸い大きな怪我はありませんでしたが、彼らとの会話は以下のようなものでした。
高校生A:「怪我ないっすか?」
筆者:「大丈夫だよ」
高校生A:「そっすか」
高校生B:「お兄さん今ウーバー中?」
筆者:「え、そうだけど」
高校生B:「仕事大変そうだね(笑)」
筆者:「………」
高校生B:「まあ、頑張れよ(笑)。じゃあな!」
謝罪の言葉も反省の態度もなく、ケラケラと笑いながら立ち去る彼らの姿を見たとき、ウーバーイーツ配達員の社会的評価がいかに低いかを痛感させられました。このような経験が積み重なり、筆者はウーバーイーツで働くことに劣等感や羞恥心を抱くようになりました。
配達バッグがもたらす劣等感と対処法
筆者は、ウーバーイーツ配達員であることを悟られないよう、仕事帰りにスーパーなどに立ち寄る際、基本的に配達用バッグを店内に持ち込みません。自転車の荷台に置いていくのは、バッグを背負った状態だと店内で白い目を向けられたり、店員さんの接客態度にも変化があると感じるからです。これは、配達員という職業が社会的にまだ十分に理解されていない、あるいは低い評価を受けていると感じる瞬間でもあります。
ウーバーイーツのロゴ入りバッグを背負い自転車で配達する後姿。
劣等感を上回る「最高の報酬」:飲食店からの「あの言葉」
しかし、繰り返しになりますが、筆者はこれまでウーバーイーツの仕事を通じて、思わず笑顔がこぼれてしまうような温かいやり取りを何度も経験してきました。ネガティブな感情や空気感なんてなんのその。劣等感や羞恥心よりも、満足感や幸福感が上回っているのです。もしもポジティブな感情が過半数を取れなければ、とっくにウーバーイーツの仕事を辞めていたでしょう。
特に、飲食店からかけられる「あの言葉」は、私たちウーバーイーツ配達員にとって最高の報酬だと感じています。それは、仕事の苦労や社会からの偏見を忘れさせてくれる、心からのねぎらいと感謝の言葉です。
劣等感を自信に変えた「魔法の7文字」の力
ウーバーイーツ配達員として経験する様々な感情の中で、心ない言葉による劣等感や羞恥心は確かに存在します。しかし、それ以上に「ありがとう」という感謝の言葉や、特に飲食店からかけられる「お疲れ様です!」という7文字の温かいねぎらいの言葉が、筆者の心を救い、再び働く喜びと自信を取り戻させてくれました。この「魔法の7文字」は、単なる挨拶以上の意味を持ち、配達員の労働を認め、尊重する気持ちが込められています。
日々の感謝やねぎらいの言葉は、ウーバーイーツ配達員の仕事が単なる物を運ぶ行為ではなく、人々の生活を支える大切な役割を担っていることを再認識させてくれます。社会的な評価が低いと感じる状況でも、直接的な感謝やねぎらいの言葉が、劣等感を乗り越え、誇りを持って仕事に取り組むための原動力となるのです。この経験は、働くことの真の価値は、社会的な地位や収入だけではないということを教えてくれました。