石破茂総理が、来たる7月の参院選公約として打ち出した国民一人当たり2万円の現金給付案が、物価高対策を謳う一方で「選挙目当て」との強い批判に直面しています。共同通信の世論調査では過半数が反対し、自民党内からも疑問の声が上がり、波紋が広がっています。
提案の詳細と首相の弁明
石破総理は6月13日の記者会見で、「決してばらまきではなく、本当に困っている方々に重点をおいた給付金」とし、国民一人あたり一律2万円、さらに子どもおよび住民税非課税世帯の大人には1人2万円を加算する方針を示しました。首相はこれを参院選の目玉公約と位置づけています。
世論の不評と自民党内の戸惑い
しかし、この現金給付案に対しては、選挙を意識した露骨な対策だとの見方が強く、国民の歓迎ムードは乏しい状況です。共同通信が6月14日と15日に実施した世論調査では、給付金案に「反対」が54.9%にのぼり、国民の半数以上が否定的な見方をしていることが明らかになりました。
石破総理の現金給付案に関する世論調査の結果、不評と支持率動向を示すイメージ
自民党内からも、石破総理の判断に対する疑問や戸惑いの声が高まっています。あるベテラン参院議員は、これまで財政規律を理由に野党の求める減税や給付を否定してきた首相の過去の姿勢に触れ、「いまさら有権者にどう説明すればいいのか」と、その変節に苦言を呈しています。
政策効果と金額への疑問
自民党の中堅・若手議員からも批判が出ています。衆院中堅議員は、給付が一回限りであることから「持続性のある消費減税よりも物価高対策への効果は乏しい」とし、金額についても「どうせやるにしても、2万円はあまりにケチすぎる」との見方を示しています。また、ある衆院若手議員は、公金受け取り口座を活用した給付自体は将来の有事に備えたシミュレーションとして意義があるとしつつも、「選挙前というタイミングが残念だ」とし、野党第一党である立憲民主党も掲げている案であることから「本当は立憲が言い出す前にやるべきだった」と、政策のタイミングと政治的な駆け引きの遅れを指摘しました。
財源説明と過去発言の矛盾
現金給付の財源について、石破総理は税収上振れ分を充てる方針を示し、赤字国債には依存しないと述べています。しかし、首相はかつて2月の衆院予算委員会で、「税収の上振れ分を国民にお戻しする財政状況ではない」と税収還元に否定的な見解を示しており、この過去の発言との整合性が問われています。「あまりに一貫性がないし、場当たり的すぎる」といった批判はこうした点にも向けられています。
石破総理が参院選に向けた物価高対策として打ち出した現金給付案は、国民の半数以上が反対するという厳しい世論に直面しています。さらに、自民党内からも政策のタイミング、一貫性、そして効果や金額に関する様々な批判が上がっており、政策の実効性だけでなく、政治的な信頼性についても疑問が投げかけられています。この現金給付案を巡る議論は、来る参院選の大きな焦点の一つとなるでしょう。