イスラエル・イラン衝突は「戦争」か? 日本在住イラン出身者と専門家の視点

中東地域では、イスラエルとイランによる攻撃の応酬が続いており、情勢は緊迫の度を増しています。この軍事的な衝突は、すでに「戦争状態」と呼べるのか、日本に住むイラン出身者と専門家の異なる視点から現状を分析します。

イランとイスラエルの間の武力衝突は激化しています。14日には、イランの隣国レバノンで撮影された映像に、夜空を飛ぶミサイルが捉えられました。これはイスラエルに向けてイランから発射されたものです。イスラエル最大の都市テルアビブでは空襲警報が鳴り響き、市民がシェルターに避難する事態となりました。上空ではイスラエル軍による迎撃が行われました。軍事衝突は4日目に突入し、16日にはイスラエル中部にイランのミサイルが着弾し、報道によると8人が死亡、90人以上が負傷しました。これまでの攻撃応酬により、イスラエル側で21人、イラン側で224人の犠牲者が出ており、死傷者が増加しています。また、イスラエル国防省は、イランが公開したプロパガンダ映像に登場したイラン革命防衛隊の幹部2人を殺害したと発表するなど、応酬は続いています。

イスラエル上空で迎撃されるイランのミサイルイスラエル上空で迎撃されるイランのミサイル

日本在住のイラン出身者が見る現状

現地情勢が緊迫する中、東京・吉祥寺でペルシャじゅうたん店を営むイラン出身のアリ氏は、故郷の家族の安全を深く懸念しています。アリ氏の弟の家からわずか600メートルほどの場所に爆弾が着弾したといい、「安全が保証できない」状況にあると話します。イランに残る家族とはほぼ毎日連絡を取り合い、現地の状況把握に努めていますが、ニュース以外で正確な情勢を知ることは非常に難しいと感じています。

アリ氏は10代の頃にイラン・イラク戦争に従軍した経験があり、今回の軍事衝突が長期化することに強い不安を抱いています。自身の経験に基づき、現在の衝突を「大戦争」だと表現し、「戦争は始まるのは簡単かもしれないんですけれど、終わるのはなかなか先は見えないというものですので」と、その危険性と不確実性を訴えました。アリ氏にとって、イスラエルとイランの衝突はすでに始まった「戦争状態」に他なりません。

専門家による分析

一方、この衝突が「戦争状態」にあるのかについて、専門家は異なる見解を示しています。日本エネルギー経済研究所中東研究センターの遠藤健太郎主任研究員は、現在の状況を「まだ本格的な戦争ではなくて、交戦状態に入ったと考えています」と分析します。

遠藤氏によれば、イスラエルはイランの核開発能力を徹底的に封じ込めることを目標としており、そのための行動を続ける可能性があります。対するイラン側は、現時点では事態のさらなるエスカレーションを避け、早期の停戦に持ち込みたいと考えているのではないかとの見方を示しました。専門家の視点からは、現在の軍事行動は「戦争」というよりは、特定の目標達成や牽制を目的とした「交戦状態」という段階にあると捉えられています。

まとめ

イスラエルとイランの間で続く攻撃の応酬は、現地に家族を持つ日本在住のイラン出身者にとってはすでに「戦争」であり、その長期化に不安を感じています。一方で、専門家はこれを「本格的な戦争」ではなく「交戦状態」と分析しており、双方の戦略的な意図に基づいた動きであると見ています。表現は異なるものの、この衝突が地域にもたらす緊張と不安定さは増しており、今後の展開が注視されます。

参考文献

  • FNNプライムオンライン