ガザ南部ハンユニス、支援待ち群衆に発砲か 51人死亡、人道危機深刻化

パレスチナ自治区ガザ地区南部のハンユニスで17日早朝、支援物資を運ぶトラックの到着を待っていた人々に対しイスラエル軍が発砲し、パレスチナの保健省によると少なくとも51人が死亡、200人以上が負傷した。この事件は、過去数週間にガザ地区で支援を求めて死亡したと報じられた件数としては最多となった。ガザではイスラエルによる11週間にわたる完全封鎖が解除され、少量の支援物資が流入しているが、支援物資配給所付近での衝突や攻撃により、これまでにパレスチナ人約400人が死亡していると同省は報告している。

事件に関するイスラエル軍と目撃者の証言

イスラエル国防軍(IDF)は17日、声明を発表し、ハンユニス地域で立ち往生した支援物資配給トラックの近くに人が集まっているのを確認したと述べた。付近にはIDF部隊も活動していたという。IDFは「群衆の接近を受けIDFが発砲し、多数の負傷者が出たとの報告を認識している」とし、事件の詳細を調査中だと表明した。また、「無関係の個人への被害は遺憾であり、彼らへの被害を可能な限り最小限に抑えるよう努めつつ、我が軍の兵士の安全も確保している」と付け加えた。

一方、事件を目撃した人物はCNNに対し、集まっていた人々が一団となって空爆を受けたと証言した。この目撃者は「我々は小麦粉を積んだトラックを待っていた。突然、群衆の中にいたところ、2発のミサイルが着弾し、人々の遺体、残骸、肉片が至る所に散らばった。何と言っていいのか分からない。彼らは人々を、非武装で何もしていない人々を殺したのだ」と述べ、イスラエル軍による発砲ではなく空爆だったと主張した。

ガザ地区南部ハンユニスで、負傷したパレスチナ人を医療施設へ搬送する人々。支援物資配給所付近での発砲事件の犠牲者とみられる。ガザ地区南部ハンユニスで、負傷したパレスチナ人を医療施設へ搬送する人々。支援物資配給所付近での発砲事件の犠牲者とみられる。

IDFは目撃者の空爆に関する主張に対し、17日に同地域で空爆があったことは「認識していない」とCNNに述べている。同日にハンユニスで撮影された現場の映像には、血まみれの遺体が数十体、地面に横たわっている様子が映し出されていた。

深刻化するガザの人道危機

死、暴力、そして絶望を描いた今回の惨状は、ガザ地区に住む210万人以上の人々の悲惨な生活状況を改めて浮き彫りにしている。国連はガザ地区が飢餓に陥りつつあると繰り返し警告しており、人道状況は極めて深刻な状態にある。

17日、国連のターク国連人権高等弁務官は自身のX(旧ツイッター)アカウントを通じて発言し、「イスラエルは食料を兵器化し、救命支援を阻止している」と強く非難した。さらに、「食料配給所に必死でたどり着こうとする市民への致命的な攻撃について、即時かつ公平な調査を強く求める」と訴え、国際社会に対し透明性のある事実究明を要求した。

今回のハンユニスでの事件で犠牲となった一人に、20歳の男性がいた。彼は家族のために食料を持ち帰ることを願い、危険を承知で配給所へ向かっていたという。彼の母親は涙ながらに「彼はピクニックに行ったのではない。きょうだいと父親のために食料を持って来ようとしたのだ」と語り、食料を得るために命を落とさざるを得ないガザの現状に対する深い悲しみと怒りを表した。

今回の多数の犠牲者を出した事件は、ガザにおける人道支援の難しさ、民間人の置かれた危険な状況、そしてイスラエル側とパレスチナ側の主張の食い違いという、紛争の複雑かつ悲劇的な側面を改めて示している。国際社会からは、一刻も早い停戦と、民間人への支援物資が安全に届けられることへの強い要求が高まっている。

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