鉄道ファンはその趣味の対象によって細かく分類されます。例えば、電車に乗ることを楽しむ「乗り鉄」や、鉄道模型を集めたり作ったりする「模型鉄」などがいます。その中でも、最も頻繁にトラブルを引き起こす存在として挙げられるのが「撮り鉄」です。撮り鉄とは、鉄道車両の写真や映像を撮影することを趣味とする鉄道ファンで、ニュースで取り上げられることも群を抜いて多くなっています。
撮り鉄は、新幹線や特急列車など、様々な列車を撮影対象とします。特に、普段運行されない珍しい列車や、引退前のラストランなどがある際には、駅のホームや沿線の撮影スポットに多くの撮り鉄が集まります。場所取りを巡って激しい口論になることも珍しくなく、時には一般の通行人や他の鉄道利用者に対して「どけ！」「邪魔だ！」といった暴言を浴びせる場面も日常的に見られます。
また、列車の安全な運行を妨害するような危険行為も問題視されています。直近では、2024年6月15日、東北本線の館腰駅と岩沼駅の間で臨時列車「カシオペア紀行」を撮影しようとした男性2人が線路内に立ち入ったことが目撃され、これによって列車に遅延や運休が発生するという事態が起きました。これは明らかに危険な行為であり、鉄道会社に多大な迷惑をかけるものです。過去にも、田んぼや畑に無断で立ち入ったり、沿線の木を勝手に伐採したりといった迷惑行為がニュースになった例は数多くあります。写真を撮るためとはいえ、ここまでやりたい放題な行為でトラブルを引き起こすのは撮り鉄が際立っています。こうした問題が報じられると、「一部の心ない者が起こした行為であり、多くの撮り鉄はマナーを守っている」という声も聞かれますが、本当に一部だけの問題として片付けられるのでしょうか。
鉄道会社が語る「撮り鉄」の実態
鉄道会社側から見て、「撮り鉄」はどのような存在なのでしょうか。JR東日本の現役駅員であるA氏は、その実情について以下のように語ります。
最も厄介な存在としての認識
A氏によれば、鉄道会社にとって撮り鉄は「最も厄介な存在」として認識されていると言います。線路内への危険な立ち入りをはじめ、列車の運行を意図せずとも妨害するような行為が後を絶たないためです。運転士の視点では、撮り鉄の行動が運行妨害に相当すると見なされるケースも多く、ニュースになっていない軽微なトラブルも頻繁に発生しているのが現状です。
A氏自身も鉄道ファンであり、普段は鉄道ファンに対して比較的寛容な姿勢を取っているそうですが、それでも過去に多くの撮り鉄とのトラブルを経験しており、強い拒否反応を示すほどになっているといいます。さらに、衝撃的なエピソードも明かしてくれました。
鉄道線路脇に立つ撮り鉄たち：危険な立ち入り行為や迷惑行為が問題に
撮り鉄は特定の撮影スポットに集まる傾向があります。A氏は当初、同じ鉄道好きとして友好的に接しようとしていましたが、運転士の師匠から「撮り鉄が手を振ってきても絶対に無視しろ。彼らは我々が手を振る行為すら『危険行為ではないか』と逐一記録し、会社に報告（チクる）することがあるから油断できない」と厳しく言われたそうです。この助言を受けて以来、撮り鉄に対して恐怖を感じるようになり、免許剥奪のリスクを避けるためにも、たとえ手を振られても無視するようになったと語ります。このように、撮り鉄が常に写真や映像で記録を残していることが、鉄道会社側にとっては非常に厄介な点となっているのです。A氏のような鉄道ファンではない一般の社員であれば、撮り鉄に対する拒否反応はさらに強いだろうと推測されます。
結論として、「撮り鉄」による迷惑行為や危険行為は単なる一部の問題として片付けられないほど頻繁に発生しており、鉄道運行の安全確保や沿線住民、他の利用者の平穏な環境を脅かす深刻な問題となっています。鉄道会社の現場からも「最も厄介な存在」としてその実態が語られており、その影響は決して無視できるものではありません。
参考文献:
