山梨県甲府市で今年5月、インターネットで購入した「高揚する成分」を含むクッキーを食べた男子大学生が、建物の2階から飛び降りて救急搬送される事故が発生しました。男子大学生は負傷したものの、命に別条はありませんでした。その後の山梨県警察による薬物検査では、違法な成分は検出されなかったとのことです。この事例は、「合法」と謳われながらも危険な物質が含まれている可能性のある製品が流通している実態と、その潜在的な危険性を示唆しています。専門家は安易な摂取に警鐘を鳴らしています。
捜査関係者らによると、この男子学生は5月上旬、通学する大学の寮内で、知人男性と共に問題のクッキーを摂取しました。その直後、精神状態に異変をきたし、建物2階から飛び降りた模様です。救急搬送後、大学側の聞き取りに対し、学生はクッキーをインターネット通販で購入したと説明。「合法ではあるが、高揚してしまう成分が含まれているものを買った」と話したとされています。
山梨県警は男子学生に対して薬物検査を実施しましたが、現行法で規制されている違法な成分は検出されませんでした。しかし、県警幹部は「状況からみて、クッキーを食べたことが飛び降り行為の原因だろう」との見解を示しています。男子学生が在籍する大学は、この件について「必要な指導をしている」とし、学生本人および身近な学生らに対し、県警が実施する薬物乱用防止講話の受講を促すなどの対策を講じたと発表しました。
山梨県警察本部庁舎、危険なクッキー事件捜査の拠点
インターネット通販サイトでは、「気分を高揚させる」「リラックスできる」などと謳い、合法と称してクッキーやグミといった食品が販売されており、誰でも容易にこれらを入手できる状況があります。「新基準適合」などと安全性をアピールする表示も見受けられますが、厚生労働省監視指導・麻薬対策課は、これらの製品に「実際は表記のない違法成分が含まれていることもある」と強く警告しています。安易に手を出し、酩酊状態や意識障害といった重篤な健康被害に至り、救急搬送されるケースが毎年のように報告されているのが現状です。
厚生労働省は、市場で流通している製品を実際に購入して成分分析を行い、検出された危険な成分を規制対象に加えるなどの対策を講じています。しかし、新たな成分が次々と出現するため、規制が追いつかず、「いたちごっこ」になっている側面があることを認めています。
安易な摂取は極めて危険
薬物問題に詳しい横浜薬科大学の篠塚達雄客員教授(法中毒学)は、人体への影響が十分に解明されていない成分を含む食品が流通している現状について、「安易に摂取するのは極めて危険だ」と指摘します。同教授は、「警察や教育機関が緊密に連携し、そうした食品を摂取した結果、体調を崩して救急搬送される事例があることを社会全体に徹底して周知することが不可欠だ」と述べ、関係機関による一層の啓発活動の重要性を強調しています。容易に入手できる「合法」を謳う製品にも、予期せぬ危険性が潜んでいることを認識し、安易な摂取は避けるべきです。