イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使は都内で産経新聞のインタビューに応じ、イスラエルによるイランの核関連施設や軍事施設への攻撃は「自衛権の行使」であると強く主張した。大使はさらに、イランの脅威を取り除くことは、イランと密接な関係を持つ北朝鮮の脅威に直面する日本の安全保障を守ることにもつながる、との認識を示した。
大使は、イランが約6カ月で核兵器化できると予測されており、核関連施設でのウラン濃縮を続ければ最大9発の核爆弾を保有する可能性があるとの危機感を示した。また、イランが今後3年間で弾道ミサイル1万発、6年間で2万発を開発するとの予測にも言及。国土がイスラエルの約80倍、人口が9倍であるイランに対し、先制攻撃に踏み切ったのはイスラエルの自衛権に基づくものであり、ドイツやフランスも同様の見解を示していると強調した。
イランがミサイル開発を継続した場合、欧州のみならず米国までもが射程に入る可能性が出てくることについて、大使は「非友好国であるイスラエルに脅威を向けるとしても、欧米に到達するミサイルが必要な理由は理解に苦しむ。自由主義諸国への脅威は断じて容認できない」と述べ、イランのミサイル能力の拡大に対する強い懸念を表明した。
大使はまた、イランのミサイルがロシアに提供され、ウクライナ攻撃に利用されている現状を指摘。中国がイランのミサイル開発を支援し、北朝鮮がイランから入手したミサイル技術を日本に向けて活用している実態にも触れた。これらの事実から、イランの脅威を排除するイスラエルの取り組みが、日本の安全保障を守ることに直結しているとし、「我々は自由世界を守る先頭に立っている」と語った。
イスラエル ギラッド・コーヘン駐日大使の肖像写真。産経新聞のインタビューに応じる同大使は、イランへの攻撃は自衛権の行使であり、日本の安全保障にもつながると強調した。
さらに、イスラエルがイランの石油関連施設にも攻撃対象を広げた背景には、イランがイスラエル北部ハイファの石油施設を攻撃したことへの対抗措置であり、イランがミサイル燃料として石油資源を利用しているためだと説明した。
イスラエルはこれまで、イランを後ろ盾とする様々な勢力と徹底的に対峙してきた経緯がある。大使は、イスラム原理主義組織ハマスによる2023年秋の攻撃以降、「玉ねぎの皮をむくように」周辺の脅威を取り除いてきたと表現。まずハマス、次に北部を攻撃する親イラン武装組織ヒズボラ、シリアのアサド前政権残党勢力、イエメンの親イラン武装組織フーシ派を挙げた。そして現在、これらの勢力を「足」としてきたタコの「頭脳」、すなわちイラン本体を攻撃している段階にあるとし、現在、これらの勢力が同時にイスラエルを攻撃することはできない状態にあるとの認識を示した。
大使は最後に、イスラエルの究極的な狙いがイランのハメネイ体制崩壊にあるかとの問いに対し、中東地域および世界の安定に対するイランの根本的な脅威に対処することの重要性を改めて強調した。