中国空母打撃群、太平洋での活動が前例ない活発さ 日本EEZ周辺に展開、戦略的意図は?

中国海軍の空母打撃群が、過去1カ月間にわたり、自国沿岸から遠く離れた海域、特に太平洋でかつてないほど活発な活動を展開しています。この動きは、中国が先端技術の実験や海上での存在感を誇示する意図があるとして、アナリストや当局者から注目されています。

中国空母打撃群の異例の活動拡大

中国人民解放軍海軍(PLAN)の空母「山東」を旗艦とする艦隊は5月初め以降、フィリピン北方で訓練を実施しました。並行して、近く就役する最新鋭空母「福建」は韓国との係争海域で活動。そして、中国初の空母「遼寧」は太平洋に進出し、日本の排他的経済水域(EEZ)での訓練を主導しています。特筆すべきは、日本の防衛省が9日に発表した、山東艦隊が宮古島南東海域を航行したという報告です。これにより、山東と遼寧の空母打撃群が初めて同時に太平洋に展開したことになります。これは台湾有事を想定した訓練だったとみられています。台湾の防衛当局者がCNNに語ったところによると、先月には九州沖から台湾、南シナ海に至る「第1列島線」付近へ、艦船約70隻を展開しました。さらに、PLANの活動は、日本の本州から小笠原諸島、米領グアムを経てパプアニューギニアへ延びる「第2列島線」の外まで及んでおり、日本の当局者らも先週、中国空母2隻の打撃群が太平洋外洋に大きく張り出して活動していると報告しました。林芳正官房長官は9日、中国空母が硫黄島より東側の南鳥島に近い海域で活動したことを初めて確認したと述べ、「中国は空母の運用能力や遠方の海空域での作戦遂行能力の向上を企図している」との見方を示しました。

訓練中に艦載戦闘機を発艦させる中国海軍の空母「山東」訓練中に艦載戦闘機を発艦させる中国海軍の空母「山東」

戦略的背景と各国の反応

こうした一連の広範かつ活発な活動は、中国がサラミを薄く切るように少しずつ既成事実を積み重ねる「サラミ戦術」で、第1列島線内を内海化する下準備を進めているのではないかとの指摘があります。線内には台湾のほか、中国が領有権を主張する日本の尖閣諸島(中国名・魚釣島)や、中国とフィリピンが衝突を繰り返す南シナ海の島々も入っています。ヘグセス米国防長官は最近、シンガポールでの安全保障会議で、「南シナ海と第1列島線で武力と脅しにより現状を変えようとする一方的な動きは容認できない」と言明。「中国がインド太平洋の勢力均衡を変更しようと、武力行使の可能性に向けて確実に準備を進めていることをはっきりと認識するべきだ」と強い懸念を示しました。PLANは10日の記者発表で、空母が太平洋の外洋で活動したことを認める一方、防衛目的だと強調。海軍報道官は、遼寧と山東の艦隊が西太平洋などで遠洋の防衛と合同作戦能力を検証する「通常の訓練」を実施したと報告し、特定の国々を標的とした訓練ではないと主張しました。しかしアナリストによれば、近隣諸国が受け取ったのは、中国が海軍大国の地位を確立したというメッセージに他なりません。

中国海軍の空母打撃群による太平洋での異例かつ広範な活動は、その作戦遂行能力の向上と地域における戦略的野心の拡大を示すものです。各国の当局者やアナリストは、これが単なる訓練にとどまらない、地域における中国の軍事プレゼンス強化に向けた動きである可能性を指摘しています。中国側はあくまで通常の訓練と主張していますが、一連の活動が東アジアおよび太平洋地域の安全保障環境に与える影響は大きく、今後の動向が注視されます。