イスラエル、イラン攻撃で米国参戦を強く要求 – ネタニヤフ首相「核の脅威排除」訴え

イランへの攻撃に踏み切ったイスラエルでは、米国による軍事的な「参戦」を求める声が一段と高まっている。イランのミサイル攻撃で被害も出ているものの、「国家の存続を揺るがす脅威」(ネタニヤフ首相)を排除する絶好の機会として、イスラエル国民の間でも主戦論が支配的な状況だ。ネタニヤフ首相は攻撃を開始した際、イランの核武装が差し迫っていると強調し、今回の先制攻撃を正当化した。ただし、武力をもって核開発を阻止するには米国の軍事力が不可欠とされる。

ネタニヤフ首相、核の脅威と米軍事力支援の必要性を強調

イスラエル政府にとって、イランの核開発阻止は長年の課題であり、今回の攻撃の最大の理由として挙げられている。特に、地下深くに建設されたイランの核関連施設は、イスラエル単独での破壊が困難とされている。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)の報道によると、ネタニヤフ首相は4月に行われたトランプ米大統領との会談で、米軍が保有する地下貫通型爆弾「バンカーバスター」を使用し、イランの地下核施設を破壊するよう具体的に要請したとされる。日ごろネタニヤフ政権に批判的な立場を取る野党党首のラピド前首相も、今回の事態においては18日、米国の軍事介入について「必要がある」と明確に訴え、ネタニヤフ首相と同じ考えを示した。これにより、イランへの強硬な姿勢と米国の支援を求める点においては、イスラエル国内の主要政党間で一致が見られる。

2024年4月7日、ワシントンでの会談に臨むイスラエルのネタニヤフ首相(左)とトランプ米大統領。ネタニヤフ氏は会談でイラン核施設への米軍事介入を要請したと報じられている。2024年4月7日、ワシントンでの会談に臨むイスラエルのネタニヤフ首相(左)とトランプ米大統領。ネタニヤフ氏は会談でイラン核施設への米軍事介入を要請したと報じられている。

イランを「本丸」と見なすイスラエル、高まる世論の支持

イスラエルは長年にわたり、イランが支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと国境地帯で衝突を繰り返してきた。さらに近年は、パレスチナ自治区を実効支配するイスラム組織ハマスもイランへの傾斜を強めており、イスラエルはこれらの敵対勢力の「本丸」をイランと見なしている。そのため、イランに対し圧倒的な打撃を与え、その軍事力や支援能力を低下させる機会を慎重にうかがってきた背景がある。イスラエルの世論調査では、人口の大半を占めるユダヤ人の83%が今回のイラン攻撃を支持していることが明らかになっている。支持者の多くが「誇り」や「希望」を感じており、この攻撃が国家の安全保障に不可欠だと考えている。また、泥沼化しているパレスチナ自治区ガザでのハマスとの衝突についても、ハマスを支援するイランの弱体化が、ガザに連れ去られた人質全員の解放、ひいては戦闘終結につながると考える市民も少なくないとされる。この世論の支持が、ネタニヤフ政権が強硬な姿勢を維持する一因となっている。

イラン反撃による被害

イランはイスラエルによる攻撃に対し、報復措置として大規模なミサイル攻撃を行った。イランからイスラエルに向けて撃ち込まれた約400発のミサイルのうち、イスラエルの迎撃システムを突破し、約20発が都市部に着弾した。この攻撃により、北部ハイファや中部テルアビブ一帯では複数の建物が崩壊するなど、甚大な物理的被害が発生した。イスラエル当局の発表によると、このイランからのミサイル攻撃によって、少なくとも24人の死者が出たという。人的被害も発生しており、事態の深刻さを示している。

今後の展開と懸念

今後の展開については、複数の見方が出ている。一つは、イランが保有するミサイル数に対し、イスラエルのミサイル迎撃システムの数が十分ではなく、交戦が長期化した場合、イスラエルが対応に苦慮する可能性があるという懸念だ。長期にわたる迎撃戦は、迎撃ミサイルの在庫や経済的な負担という点でイスラエルにとって大きな課題となる。一方で、イスラエルによる攻撃がイラン国内のミサイル発射施設や関連インフラの破壊を進めているという見方もある。これにより、イランからイスラエルへの攻撃能力が次第に弱まっているとの分析も存在する。どちらのシナリオに進むかによって、中東情勢の安定性が大きく左右されることになる。

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