イラン・イスラエル衝突「最悪シナリオ」とは? 米国の関与と予測される3つの可能性(BBC)

イランとイスラエルの間で続く軍事衝突は、6月13日のイスラエル軍による攻撃を端緒として始まった。現在も両国間の攻撃の応酬が続いている。この衝突が引き起こす可能性のある「最悪のシナリオ」として、英BBCはいくつかの可能性を挙げている。特に、米国の関与が現実味を帯びてきたことで、事態のエスカレーションが懸念されている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国の攻撃計画がすでに承認され、最終命令を待つのみであると報じている。BBCが指摘する、この危機における主要なシナリオを見ていこう。

イランによるミサイル攻撃で、イスラエルのテルアビブ市内に着弾した場所を示す画像。この画像は、両国間の衝突の激しさを示している。イランによるミサイル攻撃で、イスラエルのテルアビブ市内に着弾した場所を示す画像。この画像は、両国間の衝突の激しさを示している。

米国が関与する可能性

米国が否定をしようが、イランは米軍がイスラエルの攻撃を承認、少なくとも黙認していると考えている。このため、イランは中東全域の米施設、たとえばイラクにある米特殊部隊基地やペルシャ湾岸の軍事基地、各地の在外公館などを攻撃する可能性がある。現在、ハマスやヒズボラといった親イラン勢力は弱まっているものの、イラクの民兵組織は依然として武装状態にあり、攻撃の実行能力を持つ。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は以前から、イラン体制打倒という自らの目標達成のために米国を引きずり込もうとしていると非難されてきた経緯がある。軍事アナリストの分析によれば、イランの地中深くに隠された核開発施設に侵入・破壊できる爆撃機と地中貫通爆弾を保有しているのは、米国以外にない。

米国のドナルド・トランプ大統領は、これまでの支持者集会で、中東におけるいわゆる「永遠の戦争」を終わらせると繰り返し公約してきた。しかし、共和党員の多くは、イスラエル政府の見解を支持し、今こそテヘランの現体制を転換させるべき時だという意見を表明している。もし米国がこの軍事衝突に積極的に参戦することになれば、それは事態の大きなエスカレーションを意味し、長く、壊滅的な結果をもたらす可能性を生むだろう。

湾岸諸国が巻き込まれる可能性

イランがイスラエルの軍事施設やその他の標的に効果的なダメージを与えられなかった場合、より脆弱で狙いやすい湾岸諸国の標的にミサイルを向ける可能性は十分にあり得る。特に、イランが長年にわたり「敵対勢力を幇助してきた」と見なしている国々が標的となる恐れがある。

湾岸地域には、エネルギー関連施設や重要インフラが多数存在する。過去には、イランが2019年にサウジアラビアの主要な油田を攻撃したとされる事例があるほか、2022年にはイランが支援するフーシ派勢力がアラブ首長国連邦(UAE)の複数の標的に攻撃を仕掛けたことで非難を浴びた。

その後、イランと湾岸諸国の一部との間には和解の動きも見られた。しかし、湾岸諸国の中には米軍基地を受け入れている国が多く、さらに2024年のイランによるミサイル攻撃の際、イスラエルを防衛するために米国と協力した国もある。もしこれらの湾岸諸国が攻撃された場合、イスラエルだけでなく、攻撃を受けた国々も自国の防衛のために米国の戦闘機による支援を要求する可能性がある。これは、中東地域全体を巻き込む新たな戦線を生むリスクを孕んでいる。

イスラエルがイランの核能力破壊に失敗する可能性

イランの核開発プログラムは、国際社会にとって長年の懸念事項である。特に、地中深くに隠されているとされる約400kgの60%まで濃縮されたウランは、完全な兵器化まであとわずかの段階にあり、その量は推定で核弾頭10発分に相当すると言われている。もしもイスラエルが軍事攻撃によってこれを破壊できなかった場合、どのような事態が予測されるだろうか。

イスラエルは過去に何人かのイランの核科学者を殺害した可能性がある。しかし、イランが長年蓄積してきた核に関するノウハウや専門知識そのものを軍事力で完全に破壊できる爆弾は存在しない。イスラエルによる軍事攻撃は、かえってイランの核開発を加速させる結果につながる可能性も指摘されている。

少なくとも、もし核関連施設の破壊が失敗に終われば、イスラエルは更なる攻撃を仕掛け、この地域を終わりのない攻撃の応酬に巻き込むだろう。イスラエル人はこの戦略を比喩的に「草刈り」(mowing the grass)と呼んでいる。これは、脅威を根絶するのではなく、定期的に活動を抑制するという考え方に基づいている。しかし、核能力という文脈においては、この戦略の限界が露呈し、地域の不安定化を一層深刻化させる恐れがある。

イランとイスラエル間の衝突は、単なる二国間の問題にとどまらず、米国や湾岸諸国を巻き込み、核開発の行方にも影響を及ぼす可能性がある。BBCが指摘するこれらのシナリオは、事態が容易にエスカレートし、中東地域に広範囲かつ破壊的な結果をもたらすリスクを示している。この不安定な状況は、国際社会の注意を引くと同時に、今後の展開から目が離せないことを示唆している。