中川翔子、SNS「すき、かわいい、おいしい」発言の波紋広がる ネット炎上と誹謗中傷対策の難しさ

《人を攻撃するためにSNS使ってる人とは絶対人生でかかわりたくないです 言葉は自分に返ってくるし書いた時点でだれかがみるから すき、かわいい、おいしい、であふれたらいい》

2025年6月11日、タレントの中川翔子が自身のX(旧Twitter)アカウントを更新し、上記のように投稿した。SNS上で他者を攻撃する投稿をする人々に対する彼女の考えを表明したものだが、この発言が批判を呼び、ネット上で炎上する事態となっている。この背景には、中川自身が長年SNSでの誹謗中傷に苦しんできたという経緯がある。

中川翔子はこれまでも、SNS上での匿名による誹謗中傷に対し、たびたび強い懸念を示してきた。彼女自身が過去に複数回にわたり深刻な嫌がらせを受けてきたことを公に語っている。2021年9月には、X上で「もう、常軌を逸した誹謗中傷、命の危険を感じさせる書き込みには、警察に相談してしかるべき対処をしていこうと思います。何書いてもいいわけじゃない、調子に乗ると大変なことになると理解してほしい」と投稿し、法的措置を検討していることを示唆した。そのわずか1カ月後には、『5ちゃんねる』への書き込みにより、中川に対する脅迫や侮辱行為を行った20代男性が書類送検されるという具体的な進展があった。

2024年10月にも、中川はXで「殺害予告、書く人が次から次に何回も何回もなんでわたしばかり?本当にこれまで警察にも何回も何回も。何人も何人も。いいかげんにしてほしいが次々と出てくるのが別個体なんですよ。警察につきだされる人生になるなんて情けなくないですか。周りの家族の方も悲しいよ。ネットだろうが逮捕されますよ」と改めて誹謗中傷への毅然とした対応を表明。続けて「言霊ってあるから好きなことやなにかを褒めたり楽しいかわいいおいしいとか嬉しい気持ちしか書きたくない」と、自身のSNS利用におけるポジティブな志向をつづっていた。今回の「すき、かわいい、おいしい」発言は、こうした過去の経験と、自身が望むSNS空間のあり方に基づいたものと言えるだろう。

SNSでの発言が波紋を呼んだ中川翔子さんSNSでの発言が波紋を呼んだ中川翔子さん

しかし、長年にわたる誹謗中傷との闘いを経ての発言にもかかわらず、今回の投稿はX上で大きな反発を招いた。「自分が今、『すき、かわいい、おいしい』で囲まれているからと言って、苦悩する人々を視界から除外しないでくださいね」「あなたのその、『特定の誰かを非難する言葉』は紛れもなく攻撃なのですが」「『すき、かわいい、おいしい』以外のものには目を塞ぎ、批判や抗議を忌み嫌っているうちに、『すき、かわいい、おいしい』を楽しむことさえままならない社会になっていくんだよ」といった批判的なコメントが殺到したのだ。結果として、中川のこの投稿は6月14日時点で771万回ものインプレッションを記録し、改めてSNSにおける著名人の発言とその受け止められ方が注目される形となった。

なぜ、中川の「攻撃的な投稿はしたくない、ポジティブな言葉を」という趣旨の発言が、これほどの批判を集めたのか。その背景には、中川の意図した「(誹謗中傷する人との)決別」というメッセージが、多くの受け手にとっては「(ネガティブな意見や批判を)排除」あるいは「拒絶」という攻撃性として映った可能性がある。さらに、現代社会においてSNSは単なるコミュニケーションツールではなく、社会インフラとしての側面も持つ。そこでは「すき、かわいい、おいしい」といった個人的な感情表現だけでなく、企業の不正告発や性加害の告発など、これまで表面化しにくかった個人の悲痛な声や社会的な問題提起も拡散される場となっている。

現実社会がポジティブな側面だけで成り立たないように、SNSもまた多様な情報や意見が飛び交う場であり、必ずしも「甘いこと」だけでは済まされないという現実がある。今回の投稿は、SNSを単なる「楽しい場所」としてではなく、社会的な意味合いを持つプラットフォームとして「真剣」に利用している人々にとって、見過ごせない内容だったと言える。

こうしたSNSに対するユーザー間の「温度感の違い」は、特に芸能人にとって大きなリスクとなり得る。多くの芸能人は、SNSを自身の活動告知やファンとの交流、いわば「サービス」の場と捉えがちだ。しかし、その投稿は誰でも閲覧可能なため、少しでも社会的な問題に触れたり、多様な解釈が可能な表現を使ったりすると、ファン以外の層から全く異なる文脈で読み取られ、炎上につながりやすい。こうしたリスクを回避するためには、クローズドな会員限定サービスでの情報発信に切り替えることも一つの手ではある。拡散力は限定されるが、「すき、かわいい、おいしい」といったポジティブな空間を維持しやすくなるだろう。

どのような理由があるにせよ、オンラインでの誹謗中傷が許されない行為であることは当然のことである。しかし、著名人のSNSでの発言が、その意図とは異なる形で社会的な議論や批判を巻き起こす事例は後を絶たない。今回の件は、SNSというプラットフォームの多義性と、発信する側の影響力、そして受け取る側の多様な背景が複雑に絡み合った結果と言えるだろう。

Source link