「最近、どこでも『あの話』は本当か?と聞かれるが、そんなことは分かるわけがないだろう」──六代目山口組の関係者は、そうため息をつく。暴力団関係者、マスコミ、警察の間で今、あるテーマが盛んに囁かれている。それは、「司忍組長が2月に引退し、竹内照明七代目が誕生する」というものだ。いずれも「来年早々にも司組長が引退する」という内容が共通している。
実話誌記者がこの噂の存在を認識しつつ語るには、「情報の出どころはYouTubeの動画だと思われます。最近、YouTubeでは六代目山口組をはじめとした暴力団情報を取り扱う動画が数多く出回るようになりました。万単位で再生される動画も多く、『暴力団YouTuber』のような存在までいます。投稿者に取材したこともありますが、国内だけでなく海外の視聴ユーザーも多いといいます。それだけに再生数稼ぎのような動画も広まっており、情報の真偽が掴みづらくなっています」。
六代目山口組の司組長(時事通信フォト)
「情報を制する者は戦いを制する」という言葉は、現代の暴力団においても当てはまる。今年4月に六代目山口組の一方的な宣言により終結した分裂抗争でも、YouTubeをはじめとした各メディアの影響力が利用されたと、前出の六代目関係者は指摘する。「分裂直後、神戸山口組側はしきりに各メディアやSNSなどを通じて、『司組長、高山清司若頭(現・相談役)ら弘道会が山口組を私物化している』というような発信を繰り返しました。分裂から1年ほどは神戸山口組に移籍する組や組員も多く、メディアでも神戸優勢という論調が目立ちましたが、それは情報戦の影響もあったのかもしれません」。
「司組長引退説」の出所と情報戦の影
今回の「司組長2月引退説」について、複数の警察関係者や山口組関係者に取材を行ったところ、「そのような事実は確認できていない」と一蹴された。ある警察関係者は、山口組に関する情報には「漏れる情報」と「絶対に漏れない情報」があると明かす。前者は組員の破門、絶縁、盃などの行事スケジュールで、後者の最たる例が六代目山口組本部の人事情報だという。
「こうした情報は、『プラチナ』(六代目山口組では直参組長を指すケースが多い)でさえ事前に知らないことがザラで、『執行部』(若頭、若頭補佐らで構成され、六代目山口組の運営方針を決めているとされる)に属するトップ陣にしか共有されません。警察が直参組長を起訴できるか難しい案件でも逮捕するのは、組織に関する情報収集ができるからでしょう。今回の話は『トップの交代』に関する憶測で、本来的には最上級の機密です。素性が分からないYouTuberに流れている情報の大半が事実と異なり、六代目側に不穏な情報を流すことで新たな分裂を策略している可能性も考えられます」。
若返りを図る執行部と司組長の動向
一方で、六代目山口組が抗争終結宣言後、人事を繰り返し、「執行部」が大幅な若返りを画策しているのも事実である。前出の実話誌記者はこう推測する。「山口組の組長は原則終身制ですが、司組長は来年1月に84歳を迎えます。また、過去の山口組の歴史を見ても代替わりに際してトラブルが起きてきたため、司組長も引き際に関して頭を悩ませていることでしょう。山口組は12月13日に『事始め』を行い、一足先に新年を迎えるため、年内は大きな動きはないと見られています。関心が集まっているのは来年1月の司組長の誕生日です。同時に新年会も催され、例年司組長は新年の抱負をスピーチします。今回は抗争終結宣言後、初の誕生日であるため、その発言内容に今後の山口組の在り方を示唆する材料があると見ています」。
抗争終結宣言から半年以上が経過したが、日本最大の暴力団組織には依然として強い関心が寄せられている。果たしてその行く末は──。





