不登校の我が子に何ができる?専門家が勧める「黒字ノート」実践例

「小学生の25人に1人、中学生の10人に1人が不登校」とされる現代。我が子が学校に行かなくなったとき、親は何をすれば良いのか途方に暮れがちです。教育相談に40年以上携わる専門家、海野和夫氏の著書『不登校を克服する』から、今回は小学6年生の女子児童の事例と、親ができる支援の一つ「黒字ノート」の実践をご紹介します。

小6女子の不登校と親の戸惑い

我が子のうち、下の子が不登校になったとき、両親はまさか自分の家庭で不登校が起こると思わず、愕然としました。少し前から学校に行きたくない、学級が嫌だという素振りは見せていましたが、「学校に行きたくないから、行かない」という言葉を聞いて、どうして良いか全く分かりませんでした。理由を尋ねても、子どもはただ「学校には行かない」と言うばかりで、親は困り果ててしまったのです。

養護教諭の助言:「黒字ノート」の実践

何をして良いか分からず悩んだ母親は、小学校の養護教諭に相談しました。この養護教諭は子どものことをよく知っており、母親に「黒字ノート」をつけることを勧めたのです。黒字ノートとは、家計簿の収入と支出のうち、収入の欄を「黒字」に見立てるように、子どもの良い点、すなわち「黒字」だけを探し、気づき、明確化し、ノートに書き留めるという実践です。母親はA5判のノートを購入し、その日の晩から早速書き始めました。

実践の始まりと気づき

当初、母親は不登校の子どものことだけを念頭に置き、「おはようと言った」「ご飯をそこそこに食べた」「パジャマを自分で脱いで着替えた」「行ってらっしゃいと言った」「ありがとうと言えた」など、子どもの行動だけを書き出してしました。しかし、しばらくするうちに、これらは本来の「黒字」(その子の強みや努力、ポジティブな変化)ではないことに気づきました。また、子どもは一人ではなく二人いるのだから、二人の「黒字」を見つけるべきだと思い直しました。養護教諭からの「一行で済ますこと、それが長続きのこつ」という助言を胸に、母親は二人の子どもの良い点を見つけ、1日1人、一言か一行書き続けるようにしました。同じ言葉を続けて書かないことを自身に戒めながら、この実践を続けたのです。

不登校の子どもの小さな良い点を見つける「黒字ノート」の取り組みを示すイメージ不登校の子どもの小さな良い点を見つける「黒字ノート」の取り組みを示すイメージ

この「黒字ノート」は、学校に行けないという側面だけでなく、子どもの日々の小さな良い点や成長に意識を向け、肯定的な側面に気づくための有効なツールです。専門家の知見に基づいたこのような具体的な実践が、子どもたちが再び前を向くための一助となることが期待されます。

出典: 海野和夫 著 『不登校を克服する』 (文春新書)
記事参照元: Yahoo!ニュース