在日中国人たちの本音:相次ぐ迷惑行為と日本の制度への苦言

日本にやってくる中国人の数が急増する中、ごく一部の中国人が日本で行った迷惑行為や法律違反に関する報道やSNSの投稿が日々増えている。これに対し、日本国内のネット上では「日本の秩序を乱すな」「法整備を急げ」「日本から出ていけ」といった怒りや不信感が噴出している。

しかし、実は日本人だけでなく、多くの在日中国人たちもまた、一部の同胞の行為に対し複雑な思いを抱いている。「同じ中国人として恥ずかしい」「日本の制度をもっと厳しくしてほしい」と彼らは望んでいるという。彼らがこのように感じる背景には何があるのだろうか。

相次ぐ中国人による迷惑行為とその影響

最近特に注目された事例として、閉山期間中の富士山に2度も無許可で登山し、いずれも自分勝手な理由で救助を要請しヘリコプターが出動したケースや、東京で行われた英語能力試験で偽造学生証を使って不正行為を行ったとして中国人の大学院生が逮捕されたケースなどがある。

これらのほかにも、免税制度の悪用による転売、無許可での白タク営業、飲酒運転やひき逃げ、いわゆるヤミ民泊、許可のない無断撮影によるトラブルなど、中国人による迷惑行為や法令違反の事例は枚挙にいとまがないほど報じられている。

こうした一連の報道やSNS上での指摘は、日本の社会規範や常識から逸脱しているという認識を生み、「日本の秩序を乱す存在だ」「日本政府は適切な対策を講じるべきだ」といった厳しい批判へとつながっている。

日本で暮らす人々や社会問題を象徴するイメージ画像日本で暮らす人々や社会問題を象徴するイメージ画像

「同じ中国人として恥ずかしい」在日中国人の本音

それでは、日本で生活する大多数の真面目な中国人たちは、これらの状況をどのように受け止めているのだろうか。筆者が複数の在日中国人の集まりに参加し、率直な意見を聞く機会を得たところ、共通して聞かれたのは「恥ずかしさ」と「懸念」の感情だった。

来日して間もないながら大阪で事業を営む40代の中国人男性は「正直、とても恥ずかしい気持ちです。同じ中国人として、日本の皆さんに申し訳なく思っています」と語る。「郷に入っては郷に従え、という中国のことわざにあるように、本来は日本の習慣や秩序を尊重すべきです。それなのに、一部の同胞が日本社会に迷惑をかけている現状では、真面目に暮らしている私たちも肩身が狭い思いをせざるを得ません」と続けた。

日本への移住歴が数年の女性は、日本が持つ秩序や治安の良さに惹かれて移住を決めたとしながらも、「今、私たちと同じ中国人が、中国の価値観や常識をそのまま日本に持ち込み、日本の社会に悪い影響を与えているように見えます。このままでは、私たちが愛する日本の“良さ”が損なわれてしまうのではないかと心配です」と懸念を示した。

さらに、約30年前に来日したベテランの中国人女性は、「以前と比べて、私たち中国人の日本でのイメージが著しく悪化してしまいました。最近は、自分が中国人だということを公言するのもためらわれるほどです」と落胆した様子で語った。

これらの感情は日本に住む中国人に限らない。SNSの急速な発展により、日本で発生した中国人に関する事件やトラブルは、中国国内にも瞬時に伝播する。前述の富士山での救助事案も、中国版SNSであるWeiboやWeChatなどで大きな話題となり、「自分さえ良ければという身勝手な行動は本当に迷惑だ」「ブラックリストに入れて強制送還すべきだ」「中国では救急車も有料なのに、ヘリコプターの費用は高額だろう。本人に全額負担させるべきだ」といった厳しい書き込みが多数見られた。中国語には「害群之馬」(集団に害を及ぼす者)ということわざがあるように、一部の同胞の行為が日本社会だけでなく、大多数の善良な中国人にまで悪影響を及ぼしている現実が浮き彫りになっている。

日本の制度の「穴」が助長する違法行為

在日中国人たちの間からは、「日本の制度は緩すぎ、悪用されやすい」「日本の制度の抜け穴が、かえって一部の違法行為を助長している側面がある」という指摘も多く聞かれた。特に問題視されていたのが、日本の在留資格や永住権に関する制度の運用である。

最近増加している「経営・管理ビザ」に関して、日本の医療制度への不正なフリーライドを指摘する声もあるが、このビザ保有者は医療保険料や税金を適切に納めなければ、その後の在留資格更新が認められない仕組みになっている。それよりも深刻な問題として挙げられたのは、過去に日本の「永住権」を取得しながら、すでに日本には居住しておらず、長期間にわたり中国など国外で生活している人々の存在である。

本来、永住権は日本に生活基盤を置き、永住を希望する者に与えられる資格である。しかし、この制度の運用において、長期間の国外滞在に対するチェックが十分でない場合があり、これが一部で永住権を悪用したり、日本の制度を利用するためだけに維持したりする行為を許してしまっているという指摘がある。真面目に日本で生活し、貢献している在日中国人は、こうした制度の「穴」が一部の心ない行動を招き、結果として自分たち全体のイメージを低下させている現状に危機感を抱いている。

まとめ

一部の中国人による日本での迷惑行為や法令違反は、日本の社会秩序を乱し、日本人からの不信感を招いている。しかし、日本に暮らす大多数の真面目な中国人たちもまた、これらの行為を深く憂慮し、「同じ中国人として恥ずかしい」と感じている。彼らは、一部の同胞の行動が自分たちの評判を著しく悪化させている現状に苦悩しており、「害群之馬」を排除するためにも、日本の在留資格や永住権など、制度の運用をより厳格に行うことを望んでいる。日本の制度が持つ「穴」を悪用する者を排除し、真面目に暮らす外国人が安心して生活できる環境を整備することが、健全な多文化共生社会の実現に向けた重要な課題となっている。

この記事は、Yahoo!ニュースに掲載されたダイヤモンド・オンラインの記事を基に作成しました。