カタール米軍基地から数十機移動 衛星画像が示すイラン報復への備え

カタールの主要米軍基地、アルウデイド空軍基地の駐機場から、米軍機数十機が姿を消したことが最新の衛星画像分析で明らかになりました。これは、拡大するイラン・イスラエル紛争への米国の関与検討が進む中、イランからの報復攻撃に備えた予防的措置とみられています。

衛星画像が捉えた基地の変容

米衛星画像企業プラネット・ラブズPBCが提供し、AFPが分析した画像によると、アルウデイド基地の駐機場には2025年6月5日時点で、C130「ハーキュリーズ」などの輸送機や偵察機を含む約40機の米軍機が確認されていました。しかし、6月19日に撮影された画像では、駐機している機体はわずか3機に激減しています。

アルウデイド空軍基地の衛星画像。2025年6月5日(左)と6月19日(右)の比較で、米軍機が大幅に減少しているのが確認できる。アルウデイド空軍基地の衛星画像。2025年6月5日(左)と6月19日(右)の比較で、米軍機が大幅に減少しているのが確認できる。

6月初旬以降に駐機場から姿を消した航空機は、基地内の堅固な格納庫に移動されたか、あるいは中東地域内の別の米軍基地に再配置されたと考えられています。この移動は、潜在的な攻撃から高価な航空機を守るための明確な意図を示唆しています。

地域紛争の拡大懸念と米国の備え

このような米軍機の移動に先立ち、在カタール米国大使館は6月19日、「継続的な地域紛争に鑑み、念には念を入れて」アルウデイド空軍基地へのアクセスを制限すると発表し、職員に対し「一層の警戒」を促しました。

背景には、イランとイスラエルの間の緊張の高まりがあります。米ホワイトハウスは、ドナルド・トランプ大統領が今後2週間以内に、同盟国イスラエルによるイラン攻撃に参加するかどうかを決定するとしている状況です。もし米国が軍事行動に踏み切れば、イランが反撃として中東の米軍基地を攻撃する可能性が強く懸念されています。

専門家が指摘する基地のリスク

元米陸軍中将で、ランド研究所の防衛専門家であるマーク・シュワルツ氏は、アルウデイド空軍基地の人員、航空機、施設は、地理的にイランに「近い」ため、「極めて脆弱」だと指摘しています。

中東での勤務経験も豊富なシュワルツ氏はAFPに対し、爆発による破片でさえ航空機を「任務遂行不能」にする可能性があると説明しました。今回の米軍機の移動は、「米軍の兵員と装備の両方へのリスクを減らしたいのだろう」という米軍の安全確保への優先順位を反映したものだとの見方を示しました。

アルウデイド空軍基地からの米軍機移動は、イラン・イスラエル紛争の拡大が中東地域全体の米軍資産に及ぼすリスクを浮き彫りにしています。今回の衛星画像と関連する米当局の動きは、米軍が潜在的な報復攻撃に備え、地域におけるリスク管理を強化していることの現れであり、今後の情勢の行方が注視されます。

出典: AFPBB News / 時事通信