日本の不動産市場において、中国系顧客の存在感が高まっている。超高額なタワーマンションをはじめとする物件を次々と購入する彼らの動きには、「潤日」と呼ばれる中国国内での動きが影響している。実は、彼らの移住先は日本が「第一希望」だったわけではない事情がある。なぜ今、彼らは日本の不動産市場を目指すのか。その「やむを得ない」事情を解説する。
不動産業界における「中華系勢力」の勢い
最近、「中国人が何億円の物件を買った」という話が、筆者の周りで多くなった。
筆者自身、不定期ながら一般の方々を対象に「不動産売却相談会」を開催してご相談を承り、売却のお手伝いをすることも少なくない。そんな中で「買い手は中国人だった」という事例が増えてきたのは紛れもない事実だ。
ジャーナリストという職業柄、中国の国内事情や在日のチャイニーズワールドに詳しい同業者と情報交換を行う機会もある。そうした状況を通して、東京の不動産市場におけるここ1年ほどの「中国人プレゼンス」の高まりにはこれまでにない強さを感じる。
そもそも、東京やその周辺の不動産市場において中華系の人々の存在が広く認識されるようになったのは、ここ15年ほどのことではないか。
たとえば、まだ東京のマンション市場が今ほど沸騰していなかった、というより低迷に近かった2010年頃、湾岸エリアで分譲されていた新築タワマンの多くは、かなり販売に苦戦していた。
中国バブルの「発端」とは
ちょうどその頃、筆者のところにマンション購入の相談にやって来る人から「モデルルームの商談コーナーから中国語が聞こえてきた」といった話を聞くことが多くなった。相談者が販売担当者に「中国人はどれくらいこのマンションを買っているのですか」質問すると、「当社では最大限2割までに制限させていただいています」と答えたという逸話も聞いたことがある。
同じ時期、筆者は不動産業界内のイベントで若手の中国人営業担当と知り合った。四方山話の中で出てきたのは「この前、北京に帰ったらA社(前述の相談者が販売担当者から「当社は2割まで、と説明していた販売担当者の所属企業)が湾岸タワマンの販売イベントを開催していましたよ。『中国の方にいくらでもお売りします、的なスタンスでしたけど』なんてトークしていました」と話していたことも印象に残っている。