10代の若者にとって、「大学受験」は人生における最初にして最大のイベントの一つです。どの大学を選ぶか、あるいは大学以外の道を選ぶかは、その後のキャリアや人生の選択肢に大きな影響を与えます。特に近年、「いわゆるFラン大学に進学するくらいなら、専門学校で実践的な技能を身につけた方が良いのではないか」という議論がしばしば持ち上がります。これは多くの受験生や保護者が直面する現実的な悩みです。本記事では、この複雑な進路選択について、書籍『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』の著者である、受験指導のプロフェッショナル、びーやま氏への特別インタビューから、その本音と深い洞察を探ります。
専門学校への「なんとなく進学」が危険な理由
びーやま氏は、「Fラン大学より専門学校」という単純な比較論に対して、無闇に専門学校への進学を勧めることには反対の立場を取ります。その理由としてまず挙げるのは、専門学校が「プロフェッショナルを養成する場所」であるという根本的な性質です。料理人であれ、美容師であれ、クリエイターであれ、専門学校は特定の分野のスペシャリストを育成することを目的としています。
なんとなく「手に職がつくから」という安易な理由で進学しても、専門学校で求められる高いレベルの学習や実習についていくことは容易ではありません。卒業後に資格を得て、その道で実力一つで勝負していく世界は、生半可な気持ちでどうにかなるほど甘くはないと、びーやま氏は指摘します。進学を決める時点で、「自分はこの道でプロになるんだ」という強い覚悟が、大学へ進学する場合よりも専門学校ではより強く求められると言います。
大学受験や進路選択に悩む学生たちのイメージ写真
プロになるための「覚悟」が問われる専門学校
専門学校は、一般的に学力的な偏差値という尺度では測られにくいため、時に軽視されがちですが、びーやま氏は「普通にすごい場所だ」と評価します。「専門学校のほうがマシ」といった言い方には、その専門性と厳しさに対する配慮が欠けていると感じると述べています。
もし自分が高校の先生だとしたら、生徒が専門学校への進学を希望した場合、「その道でプロとして生きていくという覚悟はあるのか?」という点を慎重に確認すると言います。大学の場合、医学部などの例外を除けば、入学時点で将来の進路が完全に決まっているわけではありません。4年間かけて様々なことを学び、自分の適性や興味を探りながら、より現実的に将来のことを考える時間があります。
対して、専門学校は入学時から卒業後の進路が明確に定まっている場合が多く、学ぶ内容も非常に専門的です。そのため、大学以上に明確な進学理由と、卒業後にその分野で活躍していくという強い覚悟が求められるのです。びーやま氏は改めて、「なんとなく進学」する場所ではない、とその特殊性を強調しています。
偏差値だけでは測れない専門学校の価値
専門学校が持つ価値は、単に「手に職をつける」というレベルに留まらず、特定の分野における高度な知識や技術を習得し、即戦力として社会に貢献できるプロフェッショナルを輩出する点にあります。偏差値という既存の評価軸の外にあるからこそ、その本質的な価値が見落とされがちです。
しかし、特定の技能や資格が求められる業界では、専門学校での学びは非常に重要視されます。美容師、調理師、ITエンジニア、デザイナーなど、多様な分野で専門学校卒業生が活躍しており、その多くは学生時代の明確な目的意識と努力の結果です。
大学と専門学校、それぞれの「進路」の違い
結局のところ、大学と専門学校のどちらが優れている、という単純な二項対立で語れる問題ではありません。それぞれの教育機関が持つ目的と機能が根本的に異なるからです。大学は学術的な探求や幅広い教養の習得を目指し、卒業後の多様な可能性を開く場である一方、専門学校は特定の職業に直結する専門スキルと実践力を養う場です。
どちらの道を選ぶにしても重要なのは、「なぜその道を選びたいのか」「将来どうなりたいのか」という明確な目的意識と、それを実現するための「覚悟」です。特に専門学校を検討する際には、「大学に行けなかったから」「偏差値が足りないから」といった消極的な理由ではなく、「この分野のプロになりたい」という強い意志が、その後の学びの質とキャリア形成の成功に大きく関わってくると言えるでしょう。進路選択は、自身の人生と向き合い、将来への覚悟を固める重要なプロセスなのです。