米ロック界の象徴的存在であるブルース・スプリングスティーン氏(75)が、以前から批判してきたトランプ米大統領について、米国の現状を「悲劇」と表現し、再び波紋を呼んでいる。最新の米ニューヨーク・タイムズ誌のインタビューに応じたスプリングスティーン氏は、その深刻な状況について詳細を語った。
米国の現状を「悲劇」と訴え
スプリングスティーン氏は先月、英マンチェスターでの公演でトランプ大統領を痛烈に批判し、大きな注目を集めた。彼はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、現在行っている欧州ツアーのセットリストには、米国の現状をテーマにした楽曲が多く含まれていると明かした。その上で、「我が国の産業空洞化とその後の信じられないほどの富の格差が重なり、多くの人々が取り残されてしまった。これは、扇動者が台頭するのに最適な土壌となった」と述べ、現在の米国の状態を「悲劇」だと繰り返し強調した。
トランプ氏の台頭と米民主主義への希望
さらに、トランプ氏の出現について「こんな人物が現れたとは信じがたいが、一部の人々にとってはまさに求めていた存在だったのだろう」と語った。そして、「過去70日間に我々が経験してきたことは、皆が『ここでは起こらない』『アメリカでは決して起こらない』と言っていたことだ。それが今、現実となっている」と、現状への強い危機感を示した。しかし、その一方で、「我が国には長い民主主義の歴史があり、独裁主義の歴史はない。根幹にあるのは民主主義だ。いつかそれが再び芽吹き、状況が好転すると信じている。そうなることを願うばかりだ」と述べ、母国アメリカの未来に対する希望も失っていないことを強調した。
昨秋の米大統領選では、民主党候補であったカマラ・ハリス前副大統領を支持するなど、スプリングスティーン氏はかねてより政治的な発言を行ってきた。
スプリングスティーン氏とトランプ氏の応酬
こうしたスプリングスティーン氏の批判に対し、トランプ前大統領も黙ってはいない。自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「この干からびたプルーンのようなロッカー」と書き込むなどして応戦した。さらに、自身がゴルフボールを打ち、それがライブ会場のスプリングスティーン氏に当たって彼が倒れるかのように見せかけた加工動画を投稿するなど、両者の対立は激化の一途をたどっている。
トランプ前大統領、ブルース・スプリングスティーン氏への批判に応酬
米ロック界の重鎮ブルース・スプリングスティーン氏による米国の現状、そしてトランプ氏への厳しい見方は、国内外で大きな反響を呼んでいる。大統領選が近づく中、著名人による政治的発言とその波紋は、今後も注目されるテーマとなりそうだ。