日本テレビは20日、タレントの国分太一さんについて、過去に複数のコンプライアンス上の問題行為があったことを確認したと発表し、出演番組の降板を決定しました。この決定を受け、同日、日本テレビの福田博之社長が記者会見を行いました。会見では、「刑事告訴は考えていない」「第三者委員会は設置しない」との方針が示されましたが、法的な観点からどのような課題や問題があるのか、弁護士の河西邦剛氏に見解を聞きました。
河西弁護士は、福田社長の会見について「非常に言葉を選びながら発言をされた」という印象を述べました。会見で明らかになったこともあったものの、基本的には事前に出されたリリースを軸に話が進められ、関係者のプライバシー保護が強く強調されたと感じたといいます。
会見内容の評価とプライバシーの課題
一方で、記者からは「内容が見えない」「記者会見になっていない」といった厳しい声も聞かれました。これに対し河西弁護士は、日本テレビが主体的に発表していることから、国分さん個人のトラブルというより、「日本テレビの関与する領域内で起こったトラブル」である可能性を示唆しました。その場合、被害者のプライバシー保護が最優先されるのはやむを得ない側面があるとしつつも、スポンサーや視聴者の理解・納得という点では疑問が残る可能性に言及しました。この点については、国分さんサイドからの情報発信が必要になるだろうとの見解を示しました。
河西弁護士は、特に被害者的な立場の方がいて、トラブル内容の公表を望まない場合には、日本テレビの社長が詳細を世の中に伝えることは人権侵害にあたる可能性があるとし、プライバシー保護の観点から福田社長のような返答になるのは致し方ないとの考えを示しました。
タレントの国分太一さん、日本テレビの番組降板発表に関連して
刑事事件化と第三者委員会設置の見解
福田社長の会見で「刑事事件に値しない」という言葉がありました。河西弁護士はこれについて二つの見方があるとし、一つは性的な暴行やパワハラ、傷害といった強い行為ではないという見方。もう一つは、仮に事件性があっても、被害者の方が告訴を望まなかったために刑事事件化しなかったという可能性も考えられると述べ、この点は明確ではないとしました。
また、「第三者委員会は設置しない」という発言については、社内で十分な調査ができているという認識に基づいている可能性が高いと見解を示しました。フジテレビの件とは異なり、「社員の処分はない」と明確にしていることから、日本テレビの社員が国分さんの加害行為を補助・協力するような場を設定したわけではない、ということも会見で明確に述べられていた点を指摘しました。
日本テレビの福田博之社長、国分太一さんのコンプライアンス問題に関する記者会見にて
日本テレビが問題を覚知したのが5月27日、そして会見が6月20日というスピード感については、早いとも遅いとも断定はできないと河西弁護士は語りました。会見のタイミングには様々な考慮があり得るとし、例えば外部への先行報道を防ぐためや、株主総会前のタイミングなどが考えられると述べました。覚知から会見までの間、日本テレビ側は非常に慎重に調査を進め、外部弁護士のチェックなども経て、国分さんへの伝達や降板の了承を得た可能性が高いと推測しました。被害者側の話や証拠を確認し、国分さん側もトラブルの事実関係を最終的に認めた上での発表に至った可能性も考えられるとしています。
TOKIOメンバーへの影響と今後の注目点
今回の問題が、TOKIOの他のメンバーに影響する可能性についても言及されました。河西弁護士は、当然考えられるとしつつも、日本テレビは「番組そのものは続ける」としていることから、他のTOKIOとしての活動や番組にどう影響するかはまだ不明確な部分が多いと述べました。現時点では、グループ全体の問題というより、国分さん個人の問題として発信されている印象を受けると分析しました。
今後、どのような点に注目すべきかという問いに対し、河西弁護士はまず「判断」を下すのはスポンサーであり、続いてテレビ局、ラジオ局、その他のメディアであると指摘しました。TOKIOというグループ全体の出演を継続させるかどうかについては、やはり背後にいる視聴者の意向やSNSでの世論の動向が無視できなくなるとの見方を示しました。
今回の日本テレビによる国分太一さんの番組降板決定と、それに続く福田社長の会見は、企業におけるコンプライアンス問題発生時の対応、情報公開のあり方、そしてプライバシー保護と社会的な説明責任のバランスという、いくつかの重要な課題を浮き彫りにしました。今後の展開は、関係各所の対応に加え、世論の動向に大きく左右されると考えられます。