米軍は22日、イラン中部にあるフォルドゥを含む三つの核関連施設を攻撃しました。特にフォルドゥ核施設は、イランの核開発における「本丸」とも称される極めて重要な拠点です。地下約80メートルという強固な岩盤の下に位置し、通常の兵器では破壊が困難とされるこの施設への攻撃は、その特別な構造と戦略的な位置づけにあります。イスラエル軍単独での破壊が困難とされてきた、この地下深くの施設とはどのようなものなのでしょうか。
イラン中部の山あいにあるフォルドゥ村。この村の地下に重要な核施設が位置する
フォルドゥの重要性と核合意からの経緯
イラン政府はウラン濃縮技術を国家の主権と「誇り」の象徴と位置づけています。特に兵器級レベル(90%)に近い濃縮度60%の高濃縮ウランを製造する中心施設が、フォルドゥと中部ナタンツです。ナタンツは既にイスラエル軍の攻撃を受け、被害が報じられています。フォルドゥ核施設は、イラン中部山間部の地下約80メートルという、強固な岩盤の下深くに建設されており、その堅牢さから、米軍が保有するような大型バンカーバスター(地下貫通弾)でなければ有効な攻撃は不可能だと考えられてきました。
2015年にイランが米欧を含む主要国と締結した核合意(包括的共同行動計画、JCPOA)に基づき、フォルドゥでは15年間にわたりウラン濃縮活動を行わないことが約束されていました。しかし、2018年に米国のトランプ前政権が一方的に核合意から離脱したことを受け、イランは2019年にフォルドゥでの濃縮活動を再開。2022年には製造するウランの濃縮度を60%まで引き上げました。さらに、2023年1月には核兵器級とされる90%に近い83.7%濃縮のウラン粒子が検出されたことが報告されましたが、イラン側はこれを意図的なものではないと否定しています。
米軍攻撃の影響と不確実性
この米軍によるフォルドゥ攻撃について、ドナルド・トランプ前大統領は22日、自身のソーシャルメディアで「フォルドゥはなくなった」とする投稿を引用し、コメントしました。しかし、今回の攻撃に先立つ形で、イラン側がフォルドゥ施設に保管されていた主要な機器や高濃縮ウランなどの核物質を事前に別の場所へ移動させていた可能性が指摘されています。もしフォルドゥの濃縮施設そのものが破壊されたとしても、核開発プログラム全体が完全に停止するわけではないとの見方も根強くあります。【カイロ金子淳】
米軍によるイラン中部フォルドゥ核施設への攻撃は、イランの核開発プログラム、特に高濃縮ウラン製造能力の中核への重大な打撃となり得る一方、施設の構造上の堅牢さや、攻撃前の核物質移動の可能性から、その長期的な影響については依然として不確実性が残ります。今後の情勢が注視されます。
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